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第2話
充SIDE
わかっている。このままじゃ、いけないんだ。理解はしている。
それでも離れられないのは……『運命』なんだって、信じてもいい……かな?
――ごめん。
僕はまた、君を利用した。
利用したくないんだ。一人で強い欲求を耐えなくてはいけないのに。
手放さなきゃいけないのに……離れられないんだ。
「ごめんね……陽真(はるま)くん。少しの間だけ借りるね」
脱いで床に落ちていた陽真くんのパーカーを抱きしめると、肺いっぱいに彼の匂いを吸い込んだ。
大好きな香り。誰にも渡したくない僕だけの温もり――。
今だけは独占させて。僕だけの……大好きな陽真くん。
「あ……どうしよう。また濡れて、きちゃ……」
「充さん、起きて。みちるさーん」
「……え? あれ、あさ?」
「俺、もうバイトの時間だから行くけど、大丈夫? 仕事、遅刻しないようにね」
覚醒していく頭の中で、パーカーを抱きしめて寝たという事実を思い出してハッとした。
バレたら……。
布団の中で陽真の服が丸くなっている感触を見つけて、ホッとした。
ここなら、バレてない。
「はる、ま」
「ん? なに?」
「……ありがと」
「兄さんにはもう、充が大丈夫だって伝えてあるから。ピル、ちゃんと飲んでから仕事に行けよ。じゃ、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
僕は布団の中から手を振ると、陽真が笑顔で部屋を出ていった。間もなくして、玄関の開閉音がして、僕は布団を折って身体を起こす。
ピル……飲まなくたって、妊娠のしようがないのに。
陽真は絶対に避妊具をつけるじゃないか。発情期に出る僕のフェロモンにだって、動じない。避妊具をつけているのに、必ず外に出すんだ。
僕は陽真の匂いが残るパーカーを鼻先に持ってきて、くんくんと嗅いだ。
大好きな匂い。
「……どうしてベータなんだ、よ。番になれないじゃないか」
心も身体も陽真を欲しているのに。
陽真の匂いに反応して、じんわりと下着が濡れていく。
「仕事、行かなきゃ」
言葉とは裏腹に、僕は下着の中に手を入れて、濡れそぼる孔にそっと指を這わせた。
好き。陽真くん――。
運命の番じゃなくても、僕の傍にいて。
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