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9話(中)

寝室のドアを開け、奥にあるベッドへ座るように下ろされ、そのままTシャツを引き剥がされる。 「あ、」 弥生は思わず両手で前を隠すが、何がおかしくてか真矢は笑って自らのハーフパンツを脱ぎ捨てると、弥生もベッドへ転がして同じようにした。 真矢のボクサーパンツの柄を見て、弥生はまたその若さに打ちひしがれているのに、当の真矢は弥生のパンツのブランドをチェックしている。 「弥生サン、パンツ黒無地派なんだ、Calxxn Klxxn?なんかぽいわ。シックでオシャレな人のパンツって感じする。」 「やめてよ、そんなに見ないで。」 真矢は口には出さなかったが、弥生のパンツに先走りのシミが出来ているのを見た。 「真矢くんみたいなよくわかんない柄のをおじさんは履かないの!」 真矢は弥生を組み敷いて指を絡める。 「なんでよ、鳥可愛いじゃん。なんか暖かいとこに住んでる名前分からないデカそうな鳥」 その言葉通り真矢の紺のボクサーにはオニオオハシやシダの葉がドットの絵で描かれていた。 少しいじけているような弥生の姿がおかしくてまた真矢は笑う。 「俺29なってもこういうの履いてるかも。 「…なんかチャラい。」 じっとりとした目が下腹部に寄せられるのを、これも悪くない気がするなどと呑気に捉えているのだ。 「そんな事ないでしょ。ね、俺がその時どんな奴か、弥生サンが確かめてよ。」 「なんで俺が」 うーん、などと唸りながら真矢は弥生の首元に顔をうずめる。 べろりと首筋を舐め 「俺が弥生サンのこと好きだから。」 耳元で低く囁く。 「…っ、」 熱く甘い好意を頭から浴びせられて、身体中が疼く。 「真矢くん…俺の気持ち聞かないの?」 言うチャンスは何度もあるのに言葉にするのが怖い。 「俺だって言って欲しいよ。好きって。」 前髪を指がすいて、額にキスをされる。指、肩、それから髪、ピアス穴にも順番にキスをされる。 「俺、言ったら、」 「うん。」 優しい瞳が真っ直ぐに弥生を見下ろして、髪を撫でる。 「言ったら…?」 少しの不安がその瞳に現れるのを見て、弥生はようやく言葉を紡いだ。 「言ったら、止まらなくなりそうで怖い、から。」 好きと同義の言葉であるそれは、真矢の不安を払拭するには十分で、同時に強気にさせる原因にもなりえた。 「そっか…。なら、言ってもらわなくちゃいけないなあ…。」 真矢は弥生の両手をシーツに縫い付けてキスをする。舌をねじ込み、口内で弥生の舌を追いかけ回しては唇を甘噛みする。 「…ん。あ、ぅ、」 舌を抜くと泡立った唾液が糸を引く。弥生が口の端に着いたそれをペロリと舐めとると、真矢は自身の下腹部の熱が上がるのを感じた。 先程刺激をしてぷくりと立ったままになっている弥生の乳首に口をつける。 「ん、ふっ」 乳輪をぐりぐりと刺激して、時折乳首に歯を立てて優しく噛む。唇で食んで引っ張ってやると弥生の腰がびくびくと反応する。 「うぅ…」 乳首を口に含んだまま、真矢は弥生のものをボクサーの上から手のひらで包んで握る。 「や、…あぁ、っ、」 「弥生サン、気持ちいいとこ教えてよ。沢山シてあげる。」 「俺そんな何回もイけないよォっ…」 真矢はそんな弥生の弱音も愛おしくなり、何度も手のひらで扱く。 「ん、ふ、だめ、こっちじゃなくて…」 弥生はもぞもぞと足を擦り合わせる。 「後ろ、触って欲しい?」 「うん。」 真矢が弥生のボクサーをずり落とすと、ダラダラと溢れた先走りで光る肉棒が現れた。 「あの、弥生サン。俺男の人とするの初めてなんだけど…。後ろって普通に指入れて平気なの?」 弥生はこくこくと頷くと少し上体を起こし、自ら足を開いてアヌスを見せた。 「こっ、ここに…」 「弥生サン、なんかヌルヌルしてるのって、」 仕込まれたローションによって、アヌスはテラテラといやらしく光を帯びていた。 「……先にローション仕込んだ、から、」 ひくつくそれをみて真矢の喉はごくりと音を立てて唾を飲む。 「なんとなく真矢くん、男とはしたことないと思って、それで、」 羞恥で泣きそうな気持ちに苛まれて、弥生は脚を閉じようとする。しかし真矢の手がそれを阻み、指の腹でヌルヌルと出口をなぞっては解そうとする。 「指、入れても平気?」 ここのところ弥生は一人が寂しい夜に、何度も真矢を想像してディルドを挿入してアナルオナニーを繰り返したため、今更指の質量にアヌスが悲鳴をあげることはなかった。 すんなりと指を飲み込んでいく。 「…、しんやくぅ、ん」 そんなことは知らない真矢が、ゆっくりと指を出し入れして、中をぬるりと掻き回す。 「あっ。ふ、指…増やしていいから」 「わかった。ね、弥生サンのイイとこ教えて。」 中指と薬指を中で広げられて弥生の腰は無意識に浮く。 「ッ、イイとこぉ、っ?」 「そう、気持ちいいとこ。」 どろりと溶けた表情で腰をビクビクと動かす弥生の乱れる様に、真矢の下腹部はボクサーを押し上げ痛いほど反り立っている。 「前立腺…とか気持ちいいって聞いたけど、どこなんだろ」 腹部側という朧気な記憶のままゆるゆると中で指を動かす。 「んぁ、さっきから、グリグリしてるそこッ…んひぃう、」 弥生は肩で何度も息をして、先走りがへその周りを汚している。 「これ、かな。気持ちいいの?」 「ぅ…ッ、イイぃ」 真矢は零れたカウパーを舐めとると、そのまま腹部や脇腹にキスマークをつける。 「ね、もう、ッあ」 弥生は上体を起こして、真矢の指を抜き取ると、ボクサーパンツに手をかけた。 「こっちで、シて」 布越しにキスをする。 「ッ、弥生サン、俺の欲しい?」 「ほしい…。」 真矢はパンツを脱ぎ捨て覆いかぶさりながら弥生に問う。 「じゃあ、その前にちゃんと好きって言わないと。」 「今…?」 「今。」 弥生は真矢のものを握っている手を上下させてものを強請る。 「答えてっ、弥生サン。」 「…………き。」 「聞こえない。ちんこは欲しがる癖に、好きは言ってくれないの?」 真矢は弥生の乳首を抓る。 「…ッ、ぁひ」 「ほら、」 指で弾き、ぢゅ、と音を立てて乳首に吸いつく。 「んんんっ、……」 舌を腹からつぅ、と這わせて頂きに触れない所で止める。 「あぁ、やだシて。」 「なら早く言わないと。」 「言ったらオカシくなっちゃう…」 「なればいいじゃん。それとも弥生サンこんままイくの?」 絶えず乳首を刺激して、ペニスを扱く。 「や、んあっ…………すき…」 「乳首されんのがすき?」 親指と人差し指でしっかりと抓られる。 「あっ!?ぅ、ちがッ、」 「ちがう?ちがくなさそうだけど…」 態とらしく困った様な顔で弥生を見下ろして、真矢は再び乳首に刺激を与える。片方は歯を立ててからべろりと舐め、もう片方は何度も指で弾いては抓る。 「…ひァ!……ッ、んぅうう…… しんやくんっ、すきぃ。」 「うん。」 ほら、もう一回、などと耳元で囁いて真矢は耳を噛む。 「しんやくんのことが、すひ、イ!?ああっ、」 「ご褒美。」 そういうと真矢は乳首へ指と口で激しく刺激を与える。空いた手は脇腹を撫でてやる。 「あ、だめ、やっ、」 歯を立てると弥生の背中が反る。 「やだ、やぁッ、や、ぃやらめ」 指で乳首を弾き、摘み、引っ張って捻じる。 「んんんっあはぁッ」 食んで伸ばしたのをガリ、と歯で刺激すると、 「ひん、あっらめイ゛ッ、イく、イクゥッ…ん゛ん゛ん゛ッ、っ、」 弥生は意味の無い言葉を発して意識を泡のように弾けさせた。 「弥生サン、乳首イキしちゃうんだ…」 真矢は機嫌よく弥生を見下ろす。 「あっ、どうしよ、ごめん俺だけ、」 反対に弥生は大罪を犯したような顔面蒼白で、真矢に縋る。 「ちょっ、弥生サン?俺怒ったりしてないよ。謝らなくて大丈夫だって、」 真矢は不意に、弥生の前の恋人の影を感じる。年齢を気にしたり、いつか女が現れると言ったり、こうして一人でイくのを謝ったり、全部そのせいなら、全部消して洗い流したい。 真矢は弥生を支えて起き上がらせると、腕の中へ閉じ込める。 「弥生サン、ちゃんと俺のこと見て?怒ってないし、嬉しいよ。」 弥生は黙って泣いているようだった。 「弥生サンが俺のするので気持ちよくなってくれてホントに嬉しいよ。俺、相手がこんな風にちゃんとイってくれたの初めてなんだ…」 真矢はとんとんと弥生の背中を摩る。どちらが歳上か分からないけれど、そんなものを全部流してしまいたい今、真矢にとっては腕の中に大人しく納まってくれることは何よりの喜びだった。 「好きだよ。弥生サン。弥生サンの気持ちいいの全部嬉しいから、だから泣かないで。」 弥生の華奢な体に負担がかからない力の限界で思い切り抱きしめる。弥生はまだ肩で息をしていたが少し落ち着いたようだった。 弥生の顔を覗き、こぼれた涙を舐める。 「ん、しょっぱい」 「そりゃそうだよ…」 二人は顔を見合わせて笑う。 弥生は真矢の体から離れ、真矢の反り勃っていたはずのものを確認する。 「真矢くんの、ちょっと萎えちゃったね。」 「弥生サンのこと、泣かせちゃったからね。ごめんね。」 「ううん、俺が取り乱しちゃったから…。俺が責任持って元気にしてあげるね。」 弥生が赤い瞳でクスクスと笑うのを、真矢は妖艶だと思った。涙と打って変わって、またひとつ知らない顔を知る。

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