18 / 20

第18話

「にしても、今日は平日だってのに何故か土日並に忙しくてさあ、健のとこはどうだった?」 「いや、うちは平常運転だったかな」 圭のことを話そうと閉店後に祐介と待ち合わせたのに、何故か圭のことを言い出せない俺がいる。 とりあえず、人前で話す訳にもいかないし、俺の家へと向かった。 鍵を差し込もうとして、ふと、開いているのに気がついた。 部屋に入ると、制服姿で真新しいエプロンをつけた、圭がキッチンに立つ後ろ姿があった。 「おかえりなさ...」 背後の祐介を見て、圭の笑顔が消えた。 「おかえりなさい、お兄さん」 「た、ただいま、圭」 圭が瞬時、いつもの無表情から笑顔を取り繕った。 「えっと...誰?」 祐介の面食らった顔。 圭はしずしずと寄ってくると、 「健さんの弟の圭です。兄がいつもお世話になってます」 深々と圭は祐介に頭を下げた。 きちんと挨拶のできる圭は多分、良家の息子なんだろう。 「あ、いや、こちらこそ。お前に弟がいたなんてなあ、早く言えよ、健」 「あ、う、うん」 「お兄さん。お兄さんのお友達の分の夕飯も用意するね」 にっこり俺に微笑み、再び圭はキッチンに立った。 なんとも複雑な思いの俺はしばらく、圭の後ろ姿を眺めていた。

ともだちにシェアしよう!