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貴族学院~第13話 紅茶※~

 ドナートは、自分から下着とズボンを脱いでくれた。  現れたのは私より一回りも大きい、象徴だった。  血管が浮かんで、先端はぬらぬらと濡れていた。 「僕のより大きい……」  ごくりと喉を鳴らして、思わず呟くとドナートはふっと笑った。 「クエンのも、大きいじゃないか?」  私は口を尖らせて、見比べた。 「別に、とってつけたようなこと言わなくてもいい。」  ドナートはくすくすと笑った。久し振りに見た、上機嫌なドナート。  貴族学院に入ってから、張りつめていて、ピリピリとしていたから少し心配だった。  私は手を伸ばして、そっと触れた。  幼馴染だが、そう言えばこんな風に触ったことはない。  着替えの時は実は一人でする。  使用人の数が少ないのもあるが、王族の肌はみだりに見せてはいけない、という。  それで服を一人で着られるようになって以来、肌を晒したことはなかった。  もし掴んだことがあればそれは、一緒に育てられていた幼児の頃だろうと思う。  手の中のドナートは熱かった。  先端をぺろりと舐めると、ピクリと震えた。嬉しくて夢中で舐めた。確かに甘い。それを飲み下すと喉が熱かった。 「クエ、ン……」  は、と熱い吐息がドナートから漏れる。それだけで背筋が震えるほど、嬉しかった。  私が、ドナートを興奮させている。  私の少ない閨知識でも、メイルがこうなるのは、少なくとも興奮して性的興味を持っているから。  嫌いな相手にこんな風になるわけがない。  物理的な刺激が加えられたとしても、ここはデリケートなのだと知っている。 「ドナート、気持ち、イイ?」  口を離して見上げると、ドナートの紅潮した顔が見えて、綺麗な緑の目が欲情の色を湛えていた。 「ああ、もちろん。クエンにしてもらえるなんて最高だ。」  涎の橋が口元とドナートの象徴にかかっていた。 「クエン、色っぽい……」  ドナートの指が私の唇を拭った。その唾液が付いた指をドナートが舐める。  かあっと、頬が熱くなった。慌てて下を向いて、ドナートにされたようにドナートの昂りを刺激した。  ちゅうちゅうと先端を吸い上げて、幹を指で刺激した。  脈打つ昂りは硬くなって震えた。 「クエン、出る……」  小さく呟いたドナートの声に、一層指で刺激して、深く咥えこんだ。  喉奥に熱いものが放たれて、それがドナートのものだと、わかった。咽かえるほどの甘い匂いにくらくらとした。  出されたものを飲み込んで、自分がされたように舐めとると口を離した。 「クエン……」  ドナートが私を押し倒した。  見上げると切なそうな瞳で私を見ていた。  おずおずとその背に手を回して、ぎゅっと抱きしめる。 「ドナート……」  顔が近づいてきて、唇が私の唇に触れて、そっと吸い上げられた。  本当のキス。  夢で見たドナートとのキス。 「……ん……」  私の唇を割って、ドナートの舌が入ってきた。私のそれを探して、口中を舐め回す。  くすぐったくて気持ちよくて。  自分からも絡ませて擦った。きつく吸われて息ができなくてくらくらした。  鼻でするんだ、と言われて息を止めていたのに気付いた。  薄い寝間着越しに感じる、ドナートの体温。鍛えられた身体の感触。  裸で抱き合ってしまいたいと、そう思った。  何度も貪るようにキスをして。  離れがたいけれど、もう起きなくてはいけない時間だった。 「ドナート。主の命令だ。」  パチパチっと驚いたようにドナートが目を瞬かせた。 「はい、クエンティン様。」 「今夜からは、ここで寝ろ。」 「え。」  思い切り、驚いた顔をした。  最近のすまし顔に少し不満だったから、意趣返しできたようで、満足した。 「ここ、ですか。」  ドナートは救いを求めるように周りを見回し、ソファーを見た。 「ここだ。」  ぱんぱんと、ベッドを叩いた。  ドナートが目を手で覆ってベッドに突っ伏した。 「……本気ですか。」 「本気だ。護衛は主の側にいて、主を守らないといけないだろう。ならここがベストだ。」 「……本音は?」 「一緒に寝たいからに決まっている。もう冬だし、寒いからな。」 「-------ッ……」 「命令だぞ?」 「わかりました。その代わり、何が起きても知りませんよ。」  ドナートががばりと起きて、脱いだ服を手に、側仕えの部屋に足を踏み鳴らして歩いていく。 「朝食を持ってきますから、その間に着替えておいてください。」 「わかった。」  ドナートが出ていくと、はあ、と息が漏れた。  奥底にしまったのに、期待してしまう。 (アクア) 『呼んだか、主。』 (その、えっと) 『閨事の時は眠っている。そうでなくても主は成長期で、魔力が必要だ。私はしばらく大部分を眠って過ごすから、安心していちゃついてくれ。』 (い、いちゃ……) 『お休み、主』 (アクア――――ッ)  今度は返事はなかった。自由か。自由だろうな。精霊だし。  でも、見ないでくれるのはありがたい。  いちゃつくって。  ため息をついて立ち上がると、制服に着替えるために自分に浄化の魔法をかけた。  その日、授業と自主訓練が終わって、夕飯を食堂で食べた後、次の日の授業の準備、予習をしていた。  ペンの音、本のページをめくる音だけが書斎に響く。  ランプの油が減ってきたのか、部屋が少し暗くなってきた。  ひと段落ついて、息を吐き出す。 「お茶を淹れてきます。」  タイミングを計ったようにドナートがキッチンへ向かう。  リビングに備え付けてある簡易なところだ。  ドナートはお茶を入れる腕前もどんどんと上がって、完璧な側仕えになってきている。  剣術も、魔法も、子供から、少年へ、変わった体躯もフィメルの憧れを呼ぶものになっていた。  最近精悍さが加わって、日々、メイルらしくなっていく。  ドナートは公爵の子息で、身分的にも高い。有望株だ。  私の方は、フィメルにも見える顔立ちや、そっけない態度、王子の中では最も王位に遠いせいか、また兄たちとの力の関係もあって、今だ遠巻きにされている。  まだ、私がメイルであると広まっているわけではないので、どちらかというとメイルの方からの視線が多い。  いつまで、二人でいられるだろうか。  この貴重な時間を逃したくなくて、今朝は強引に一緒に寝ろだなんて言ってしまったけれど。  パタリ、とドアの閉まる音が響いて視線を上げた。  ティーセットを手にしてドナートが戻ってきた。紅茶のいい香りが漂ってくる。  綺麗な手つきで紅茶をドナートが入れる。もう夜なのでお茶菓子はなしだ。  目の前に置かれたカップから、湯気が立ち上っている。 「美味しい。ほんとに淹れるの上手くなったな。」  香りがふわっと立ち上り、口に含むと茶葉の甘みが来る。  私が一番摘みの茶葉が好きだ、と言ったら、いろいろな国から取り寄せてくれているみたいだ。  普通の紅茶より、薄い色合いが白いカップに映える。 「鍛えられたからな。」  対面でカップを持って飲むのは、幼馴染のスタンスだ。 「ほんとに、ドナートは凄いよ。僕は勉強と鍛錬で精いっぱいだけど、僕の世話焼きのための修行もしているんだから。」  ふいっとドナートの視線がそれる。ほんのり、目元が赤い。  照れた。こういった仕草はまだ、可愛い年だ。お互いに。 「側仕え見習いだからな。できなきゃ、お前の側にいられないだろ。」 「……」  心臓が、止まるかと思った。 「嬉しいな。あの時、ずっと一緒にいてくれるって、言ってくれたね。」  嬉しくて微笑む。カップを置いて手を伸ばした。テーブルの上の、ドナートの手に。 「お前を、死なせたくないからな。絶対に。」  その手を指を絡めて握られて、引き寄せるように少し引っ張られた。  ドナートが椅子から腰を浮かす。 「うん。守って。」  近づいてくる、ドナートの顔に、私はそっと目を閉じた。  キスは、甘い紅茶の味がした。

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