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貴族学院~第15話 溺れる※~

 その日、ふさぎ込んでいた私に気付いたのか、ベッドに入ったときに、ドナートが聞いてきた。 「何か、あったのか? クエン……」  私はこんな見苦しい感情を見せたくなかった。 「別に、何も?」  首を横に振る私をグイっと引き寄せて抱きしめるドナートに、私は赤くなった。 「今日、授業に遅れそうになったよな? 誰かにいいよられたか? まさか、襲われたり……」 「そんなことない。あるわけない。言い寄られていたのはド……」  びっくりして否定する。襲われるなんて、あるわけがない。メイルを襲う奴はいない。ましてや私は王族だ。 「言い寄られてたのは?……」  じっと間近に見つめられて、これは言うまで許してくれないパターンだと、悟った。 「ドナートの方、だろう……」  声が沈んだ。胸がチクリと痛む。  だが、私の沈んだ気持ちとは裏腹に、ドナートは何故か、嬉しそうだった。 「俺が、言い寄られてた? 今日? 見てたのか、クエン?」  私は真っ赤になって首を振った。 「見かけないフィメルと何か、話してるなって思って、邪魔になったら悪いから違う通路から、教室に向かったから見かけたけど、じっと見てはいない。」  ドナートの手が頬を撫でた。 「可愛いな、クエン。ただ、聞かれただけだ。あのフィメルには、俺に婚約者はいるんですかと。」  可愛いは余計だろう。なんだ、可愛いって。 「ふううん。」  そんなこと聞きたくなくて、顔を背ける。 「もちろんいないし、婚約者を作るつもりはないと答えた。私は、クエンティン様に仕えるため、忠誠を捧げているからと。」 「ドナート……」 「私のすべては、クエンティン様に。」  私の髪を掬い取ってキスするドナートは、あの、港町での夕日を思い出させた。 「ずっと、側にいて、ドナート。」  私の方から抱き着いて、キスをした。  お互いに貪るようなキスを、何度も交わした。お互いに熱が上がって、収まりがつかなかった。  ドナートが、私の首筋にキスをする。だんだんと胸まで降りてきてあちこちに口付けた。  唇が触れるたびに快感が襲う。  気持ちよくて快感に流されてしまう。  胸の尖りを咥えられて吸い上げられると強い快感がそこから走った。 「あ、なに? き、気持ち、イイ……」  こんなところ、気持ちよくなるなんて。 「ここも、気持ちいい?」  反対側の尖りも吸い上げられてびくっと身体が震えた。 「うん。……気持ち、イイ……」  こくこくと頷くと満足そうに微笑むドナートの顔に見惚れてしまった。  あちこちにキスされて、キスされたところがなくなる頃、私は息を乱して、快感に酔っていた。 「こんな、の……変に、なる……」  目尻に涙を滲ませた目で睨んでも、ドナートは嬉しそうにして、欲情の熱を宿した目で見つめ返すだけだった。 「変にしてるんだから、いいんだ。」 「いいの?」 「いいんだ……」  ドナートの手が、唇が、私を真っ白にする。  私のモノは勃ち上がりきってしまって、ぐしょぐしょになっている。  ふと、ドナートの股間を見ると、猛り切ったそれが血管を浮かばせて揺れていた。 (ああ、こんなに僕に欲情してくれている。それが嬉しい)  快感に意識が蕩けて、目を閉じると、いきなり四つん這いにされた。 「あ、ドナー……ト?」  ドナートが覆いかぶさってくる。少しヒヤリとした。ドナートの熱いモノが私の足の間に差し込まれて、  ドナートと一つになりたいけど、でも、まだ、覚悟はできていなかったのが理解できた。 「足を閉じて。大丈夫、突っ込んだりしない。」  私の不安に気付いたのか、優しくドナートは言ってくれて。  足を閉じられて、一層私のモノを持ち上げるように差し込まれているドナートの猛りを意識した。私の足を跨いで腰を手で支えたドナートは腰を揺らした。 「……あっ……」  ドナートの幹で、股間から裏筋を擦られて気持ちいい。腰をぶつけるようにして抽挿するのに、まるで、子作りをしているような気分になった。 「こ、こんなの……」 「気持ちいい、もっと締めてくれ。」  ドナートの手が私の腿の両側を押さえた。腿に力を入れて足を閉じる。ビクリとドナートが震えた。  次の瞬間、一層強く突き込まれて、身体を揺さぶられる。 「……ドナート……ドナ……あん……あっ……あっ……」  猛りの根元から後孔までの間がこんなに快感を与えてくれるなんて、知らなかった。時折、背中にキスするドナートの汗が背中に落ちて私の汗と一緒にベッドのシーツに染みを作った。 「……はっ……クエン……」  切なげに私を呼ぶ声に振返ると荒々しく口付けられた。ドナートは、背中と胸を密着するように抱き込んで、腰だけが別の生き物のように激しく動かして私を絶頂へと導いた。 「……あん、あ……き、気持ち、イイ……あっ……イきそ、う……イく…イくっ……」  自分からも腰を揺らして限界を訴えると手が私のモノをきつく扱いた。 「……あっ……あああッ……」  ドナートも一緒に果てて、私たちはベッドに崩れ落ちた。 「は……はあ……」  背中に感じる重みさえ、心地いい。 「こんな、こと、何で、知ってる、の……」  私以外と、したことがあるのか。  思わず睨むと、ドナートは目元を染めて視線を逸らす。 「……その、修行の合間に、な……グレアム師匠が……メイルなら、これを覚えておけって指南書、を。」  は? 「いざという時、何もできないのは困るだろうって……」  私はその時、勇者が怒る気持ちがわかった。それにしても一体いつ渡したんだろう。最近会っていないと思うが、本だけドナートに届いたのだろうか? 「ほかの人とこんなことはしてない?」 「してません。」 「なら、いい。すっごく、気持ちよかった。」  チュッと音を立ててキスして微笑んだ。 「クエン……ッ……」  ドナートの飲み込んだ言葉は、私も言えない。  奥底にしまった気持ち。  それは恋情。  メイル同士では気軽に言うことのできない、愛の言葉。  それを確かめるような、ぎりぎりの行為。  私たちはその戯れに溺れた。  そうして季節は移り変わり、年度末の休みを迎える。 「暑い。袖の短いのを着たい。」  手でバタバタと仰ぐと、ドナートがそれを見てくすりと笑った。  ふわりと風が吹き抜けた。涼しい。 「魔法?」 「ああ。これくらいなら魔力は微々たるものだしな。袖の短いのは着られないぞ。王族は肌を見せられないんだろう?」 「う――…水遊びもできないのはちょっと。」 「まあ、俺はクエンに他の人間に肌を晒してほしくないから、好都合だ。」  チュッとキスされて真っ赤になる。 「可愛いな、クエン。」 「な、な、何言って。もう、離れろ、暑い。制服が皺になる。」  がっしりと抱きこまれて、今度はもう少し長いキスをされた。 「……は、はあ、はあ……もう、迎えが来るから、出ないと。」  両手で突っぱねて体を離す。くすくすと笑うドナートは年々図太くなっていく。  ……まあ、許しているのは私だけれども。 「馬車をよこすって書いてあったなあ。まさか、勇者の屋敷に招待されるとは思わなかった。」  ドナートがひらりと手紙を揺らす。  年度末の休みまで1ヶ月というところで、手紙が来た。夏休みは王都にある、勇者の屋敷で過ごさないか、と。  荷物はマジックバッグに詰め込んで、極力減らした。  鍵を閉めて寮の玄関に向かう。荷物は、ドナートが持ってくれた。  そして、学院の停車場に待っていた馬車の御者はなんと、大魔導士だった。 「よ。久し振り。」  ひらりと振られた手に、変わってないな、と思いつつほかの生徒の視線を気にしてくれと、そう思った。

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