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第3-1話頼られるのは嬉しい

 本格的な掃除は明日に回して、私たちは台所と寝室を大雑把に片付けた。  私が風呂へ入っている間に、詠士は押入れに収納していた布団を出し、海外で洗い損ねた物を選択してくれた。私も手伝いたいところだが、思うように動かない体が歯痒い。  せめて詠士が入浴している間、飲み物を用意しておこうと考えたが――お盆に載せたコップすら持てない身。しかも枕元には既に私用の麦茶入りペットボトルが置かれている。私は先に寝室で詠士を待つことしかできなかった。 「真太郎、ちゃんと水分補給したか……って、どうしてそんな打ちひしがれているんだ?」 「……いや。君にばかり負担をかけさせてしまって、自分の情けなさについ」  布団の上に座り、うなだれながら頭を抱える私へ詠士が話しかける。 「これぐらい負担じゃないから気にするな。真太郎がいなくても、やらなくちゃいけないことなんだし。俺が生活するためのついでだと思ってくれ」 「しかし――」 「明日になったら真太郎には外で草むしりをしてもらうから。しばらく何もしなかったから、あちこちで雑草が生えているだろうし。頼りにしているぞ」  詠士に頼る、と言ってもらえるだけで嬉しくて、私は顔を綻ばせて「分かった」と頷く。

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