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第4-1話秋空の下で
◇ ◇ ◇
次の日は心地良い秋空だった。
夏よりも日差しが柔らかくなり、木陰を出た所での草むしりも苦にならない。
軽く汗ばみながら伸びた雑草を抜いていくのは、なんとも心が落ち着く。
私が庭の手入れをする一方で、詠士は家の掃除をしながら自室で仕事もこなすという、なんとも器用で忙しい時間を送っている。
もう少し私の体が動いてくれるなら、詠士の負担を軽くすることができるのに。
草むしり中に何度もそう考えて、私は首を振る。
体の機が完全には戻らないとはいえ、気長にリハビリを続けていけば、今よりももっと身動きが取れるようになる。
焦ってはいけない。今は無理でも将来的にできるようになればそれでいい。
詠士との生活はこれから長く続いていくのだ。私も彼も切望した日常。それを申し訳ないと常にうつむいていては、彼との日々にケチをつけるようなものだ。
胸を張ればいい。できることが限られていても、私は詠士の心を支えられるのだから。
そう自分に言い聞かせ、目の前の雑草取りに精を出していく。
何度もそんなことを繰り返している最中、詠士が家の裏にある納屋から、何やら段ボール箱を持って庭へやって来た。
「どうしたんだ、その段ボール箱は?」
「ふっふっふっ……ちょっとな」
上機嫌に口端を引き上げながら、詠士は段ボールを縁側に置く。ドシンッ、と重たい音。何が入っているのか気になってしまう。
興味深げに視線を送っていると、額に滲んだ汗を腕で拭ってから詠士が私を見た。
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