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第6-1話見透かされて

   ◇ ◇ ◇  買い出しから帰宅した後、私は「寝室で待っていてくれ」と詠士に請われ、言われた通りにする。  庭いじりから休む間もなく外出。少し疲れた。  特にすることもない。私は横たわって軽くまぶたを閉じる。  音こそ鳴らないが、自分の腹部が空腹を覚えてもどかしい。  おやつを食べたはずなのだが、どうやら呼び水になってしまったらしい。口と腹の幸せは最高の食欲増進剤だ。  こんな風に何もしない時間を過ごしている自分が未だに信じられない。  部屋にひとりでいると、まるで時が止まった中で生きているような気分になってくる。  だが不思議なもので、詠士が目の前にいるとむしろ時が早く流れ出す。  瞬く間に臨終の間際になってしまいそうな――それだけ詠士との時間に心が躍ってしまう。  ずっと別々にいたからこそ、身も心も彼との時間を渇望している。  そんな自分に気が付いてしまい、私は自分の額を手で覆い、細長い息を吐き出す。  ああ、額が熱い。こうしてひとりで詠士のことを考えて、年甲斐もなく照れてしまう自分が嫌だ。  いい加減に慣れてくれ。毎日がこの調子なんて、初恋を知りたての初心な若い子でもあるまいのに。  体は休めど心と頭は休まらず、目を閉じながら眉間に力を入れたり、小さく唸ったりしていると、 「待たせて悪かったな真太郎。準備ができたから、こっちに来てくれ」  ガラッ、と。勢いよくふすまが開き、詠士が声をかけてくれる。  自分の思考に悶々とするばかりで、こちらへ来る足音を聞き逃していた。不意を突かれて思わずビクッと全身が跳ねてしまった。

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