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第6-2話見透かされて

「はは、うたた寝してたところを驚かせてしまったか。すまないな」  ……なんとも情けない。  恥ずかしさを押し殺しながら上体を起こしていると、詠士の手が私に差し出される。  どうか何も言ってくれるなと思いつつ詠士の手に掴まり、私は立ち上がる。  両足を着けて膝を伸ばせば、自然と顔は詠士に近づいてしまう。  一瞬だけ逸らしてしまった私の視線を、詠士は見逃しはしなかった。 「もしかして、俺のことを考えていたのか?」 「えっ……あ、いや、別に……」 「嘘がつけないよな、真太郎は。動揺がすぐ顔に出る。特に俺とのことは」  私を置き上がらせる目的を果たした詠士の手が、流れる動きで私の腰を抱く。  そうして抱き寄せられ、呆気なく私の唇は詠士に奪われる。  何度か唇と舌で優しく食まれながらのキス。  激しさはなくとも、自分たちの関係を思い知らされる。体の奥は詠士に刻まれたものを思い出し、また迎えたいと淡い疼きを覚える。  足腰から力が抜けて座り込んでしまう一歩手前で、詠士は小さく笑いながら唇を離した。 「このまま押し倒したいところだが、せっかく用意したものが無駄になるからな。続きは夜のお楽しみだ……な? 真太郎」  愉悦の笑みを唇に浮かべながら問うてくる詠士に、私は言葉を返すことができなかった。  代わりにコツ、と。軽く握った拳で詠士の額を小突いた。

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