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第7-1話今日の夕食

 いつもなら食卓について夕食をとる時間。  詠士に手を引かれながら向かった先は、家の広間だった。  中を目にした瞬間、今までなかったものが部屋にあるとすぐに気づく。  部屋の中央に現れた正方形の穴。  四方は木枠に縁取られ、真中には赤々とした炭と白灰。その上には大きめの金網が乗せられている。  並べて置かれた藁で網まれた円座布団二つの周りには、買ってきたばかりの魚介類や切り分けた野菜、地酒の瓶、竹筒やパン生地などが置かれている。  一旦目を見開いてから私は吹き出した。 「いったい何をやっていたのかと思えば、囲炉裏を出したのか」 「ああ。せっかくあるのに使わないのはもったいないだろ。さあ今日の夕飯は炉端焼きだ。色々と用意したから、どんどん食べてくれ」  よほど私にこれを見せたかったのだろう。子供が宝物を見てくれとせがむように、詠士が私の手を引いて囲炉裏へと連れていく。  ゆっくりと円座に腰を下ろせば、炭火の熱がほんのりと私の顔を包んでくる。  ほのかな明かりは心穏やかになるというのに、未知の体験で胸が昂ってしまう。  もうこんなおじさんだから、子供のようにはしゃぐことはできない。しかし目前の囲炉裏を眺める自分の瞳が、童心に帰って興奮に煌めいているのを感じた。  私に少し遅れて詠士も座ると、私に手拭きを渡し、自身も手を拭いてからトングで海鮮類や野菜を網に並べていく。

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