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第7-2話今日の夕食

 ハマグリは殻を器にし、ぐつぐつと貝のエキスが煮立つ頃に醤油を垂らし入れ、甘みと旨みが詰まった身を頬張る。  椎茸は笠を裏返したまま火を通し、水滴がいくつか浮かべば食べる頃合いだと詠士が皿に取り、地元の浜塩を振りかけて食べる。肉厚の椎茸は風味が強く、シンプルな味付けだけでも存在感がある。  イカは醤油をつけて香ばしく焼き、今が旬の鮭はアルミホイル焼きにして、バターの風味と一緒にホクホクとした身を楽しむ。  パン生地は細めの竹筒に巻き、網の隅で火を通していき、フカフカの巻きパンを手で千切って口に入れていく。  味変にこれもいいだろうと言って、詠士がパン生地を広げて溶けるチーズを包み焼き始めた時には、ああ、また胃袋を掴まれてしまう予感がした。そして熱に悶えながらもやっぱり胃と胸奥をがっつりと掴まれた。  自分たちの好きな物を焼き、食し、それを肴に地酒を嗜む。  キャンプでのバーベキューみたいなものだが、それとはまた違った良さがある。  外は見えず、明かりは囲炉裏の火のみ。  自然の息吹も遮られたこの場で息があるのは、私と詠士だけ。  まぐわらず、夢にも落ちていないのに、二人でどこまでも沈んでいく感覚を味わう。

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