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第8-1話贅沢な時間

 次第にほの暗い繭の中で、詠士と一緒に閉じこもっている気分になってくる。  完全に二人だけの世界。今ここで互いの命や存在を共有しているという、妙な連帯感と繋がりを覚えてしまう。  一通り食べ終えて私は吹き抜けの天井を仰ぎ、ふぅ、と息をついた。 「どうした真太郎? もう胃袋は限界か?」 「ちょっと休んでから、あと少しだけパンをもらうよ……なんというか、こんな過ごし方は初めてだから、さっきからずっと感動している」 「いいだろう囲炉裏は。この家を俺の隠れ家にし始めた頃、囲炉裏を出そうとは思っていたんだ。でもな、ひとりでやることを想像したら侘しくなってな。囲炉裏用の灰を取り寄せていたのに、使わずじまいで納屋へ放り込んでしまった……こうやって使う機会ができて良かった」  顔を私に向け、苦笑しながら詠士が教えてくれる。  横から囲炉裏の明かりに照らされた顔が、心なしかいつもより和らいで見える。  私の前では余裕があるように見せているが、裏では仕事に穴を開けまいと必死になっていることも、私へ激情をもっとぶつけたい衝動と戦っていることも知っている。  どうか無理はしないでくれと言いたいところだが、詠士が望んでいるのはその言葉じゃないことも分かっているつもりだ。

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