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第2-1話実は分かりやすい男

 あとは玉子焼き専用の焼き器に油を引き、余熱をしてから焼いていけばいい。  火は強めのまま、三回に分けて玉子を焼いて巻いていく。側面もしっかりと火を通しながら、菜箸で軽く押さえて形を整え――ぽとん、とペーパータオルの上に転がす。  そしてまきすで巻いていき、粗熱が取れたら完成だ。  味噌汁と漬物、炊き立てのご飯を茶碗に盛り、そろそろ真太郎を起こしに行こうかと思った頃。 「おはよう、詠士。いつも朝早くからありがとう」  まだ完全に起き切っていない顔で真太郎が起きてきた。淡く微笑むその顔を見られるだけで、毎日繰り返される日常の雑務が俺の喜びになる。  真太郎につられて俺は顔を綻ばせ、真太郎に「おはよう」と近づく。  着直したであろう寝間着用の浴衣だが、若干着付けが甘い。  少し戯れたならすぐにでも乱れてしまいそうな気がする。悪戯心が芽生えそうになり、俺は心の中で首を振って自分を抑える。  今日はやるべき仕事がある。ここで予定を大きく崩す訳にはいかない。  だから今は挨拶のキスを軽く唇に重ねて切り上げる。それでもたったこれだけで頬をうっすらと赤くする真太郎が可愛くて、もっと愛でたくてたまらない。  理性と渇望を戦わせながら、俺はわずかに残っていた朝食の準備を済ます。  そうして表向きは穏やかな朝の食事を始める。

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