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第2-2話実は分かりやすい男

 向かい合って真太郎と食事ができる日常。  未だにこれが日常になったのだという実感が湧かない。春を過ぎた頃から今日まで、海を渡って出張した時ですら朝をともにしてきたというのに。  手に力が入らず箸を使うことができない真太郎は、フォークで朝食を食べ進めていく。  玉子焼きを最初にひと口食べると、口は閉じているのに頬や目元が緩む。ああ、感想を言ってくれる前に、口に合ったのだと分かって嬉しくなる。  真太郎は普段から淡々とした言動が多いが、意外と食に関しては反応がいい。  直実な性格だからか、傍から見ていると分かりやすい。本人に自覚はないようだが、良いことも悪いことも顔に出る。わずかな動きだが隠せていない。  喉がごくりと動き、真太郎の唇が動こうとする。  何を言おうとしているのか分かっていたとしても、真太郎の低く柔らかな声で紡がれるなら、それは俺にとって何よりも特別で嬉しいことだ。 「朝からこんなふわふわな玉子焼きが食べられるなんて……詠士、本当は料亭で修業したことがあるだろ?」 「時間があればやりたかったが、忙しかったからなあ。あと俺は不特定の人間に料理を食べてもらいたい訳じゃなくて、自分の舌を楽しませたいだけだったし」  一笑してから俺は玉子焼きを口に運ぶ。粗熱が取れ、ほのかな温かさすら美味い。

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