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第4-1話在宅で仕事

   ◆ ◆ ◆ 「おはよう篠崎。昨日進めてもらった案件はどうなった?」 『おはようございます桜間社長。先方に確認を取りましたが――』  朝食の片づけが終わった後、俺はノートパソコンを立ち上げて秘書の篠崎に連絡する。  通話ソフトを使えば、顔をみながら会話ができる。良い時代になったものだと思いながら、老け顔の男性秘書の話に耳を傾ける。  なるべく真太郎のサポートをしたいから、可能な限り仕事は在宅でやらせて欲しい――私情を押し付けてしまったが、戸惑いながらも社員は俺の事情を受け入れてくれた。  まあ社長だから反対しにくいというのもあるし、今まで家族の看病や介護で通常通りに働けなくても、給料はそのままに社員の都合を受け入れてきた。一般とは違う働き方になっても仕事が回るようにしてきたことが、俺のワガママを通す土台になっているだろう。  そして社長だからオフィスに必ずいなくてもいい。むしろいないほうが伸び伸びと仕事ができる、と副社長や秘書に言われてしまった。おそらく俺に気を使っての発言なのだろうが、正直複雑だ。  必要な報告を受けた後、秘書にやってもらいたい要件や副社長への伝言を頼む。  一通りやり取りをしてから通話を切り、しばらく海外のニュースや関連企業のホームページを巡る。必要があればメールを送り、可能なら商談のセッティングまでこぎつける。

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