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第4-2話在宅の仕事
社長はある意味、サッカーで言うところのリベロだと俺は考えている。
全体を見て、足らないところを補ったり、指示を出して人を回したり、時間が空いたら可能性の種を探したり、営業を仕掛けたり。社長なんて雑用みたいなもんだ。それで俺のところはうまく回っているんだから、それでいい。
やるべきことを進めて、少し休憩がてらに私室を出て真太郎の姿を探す。
真太郎はいつも庭へ出て草むしりをしているか、天気が悪い時や休憩の時は居間で読書をしている。
今日は本に集中している真太郎を見つけ、居間へ入る手前で俺は立ち止まり、斜め後ろから息を潜めてその姿を眺める。
昔から置いてある革張りの茶色いソファーで読書する真太郎は、浴衣をまとっていることもあり、古い時代の書生のように見えてしまう。
襟首から覗くうなじが、なんとも艶めかしい。
そんな風に見られているとは未だに思っていないんだろうな、と苦笑してから、俺は足を忍ばせてソファの背後へ回り――。
「真太郎、何を読んでいるんだ?」
声をかけながら真太郎の首に腕を巻けば、その体がビクンッと大きく跳ねる。完全に意表を突かれたらしい。
そして見る見るうちに耳が美味そうに赤くなり動揺を露わにする。ああ、やっぱり分かりやすい。
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