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第5-1話無自覚の誘い
「い、いきなり背後からはないだろ……っ。心臓に悪い」
「そこまで驚くことか? もしかして俺に忍者の才能が?!」
「わざと言ってるのか? まったく……好きな相手からいきなり抱きつかれて、平然とできる訳がないだろ」
……俺は夢を見ているのか?
いや、でも腕の中の真太郎はしっかりと温かい。頬を指で押してもぷにぷにとした感触はあるし、肩口に顔を埋めれば真太郎からのにおい――ほのかに甘くて、ナッツの香ばしさも混じったような――が胸奥をくすぐる。うなじを吸えばしっかりと体が跳ねて――。
「ぁ……っ、こら、まだ昼にもなっていないんだぞ? やめるんだ、詠士……っ」
「悪い、ついうっかり」
「うっかりで人を悶えさせようとしないでくれ。夜まで待たされる身にもなってくれ……ずっと君のことばかり考えて、泣きそうになる……」
首を捻って俺を見上げる真太郎の目が熱く潤む。
無自覚の誘いは強力だ。今すぐ押し倒して望みに応えてしまいたくなる。
それでも俺は理性を総動員させ、獣と成り果てたがる自分を抑え、真太郎の顎を手で支える。
「俺はいつだって真太郎のことで頭がいっぱいだから、その気持ちは分かるつもりだ……それでも、もっと――」
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