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第9-1話同じ飢えを望みながら
こんな奇跡を求めて真太郎を支えたいと望んだ訳じゃないのに。
ずっと秘めていた渇望が形になり、歓喜の裏で罪悪感が滲む。
だから真太郎から許しをもらえると心が救われる。
そして飢えに拍車がかかる。
一旦繋がりを外して真太郎の隣に転がり、俺は乱れた息を整えていく。
何度か深呼吸を繰り返した後に上体を起こすと、ぐったりとうつ伏せになり続ける真太郎の肩を掴み、寝返るよう促す。
ごろん、と素直に仰向いた真太郎は未だ体を弛緩させ、行為の余韻に蕩けていた。
視線が定まらず、ぼんやりとした顔。頬も赤いままだ。
空気を少しでも取り込もうとする半開きの口の端から、喘ぎ続けた乱れた痕跡が未だ零れ落ちている。
現役を離れたとはいえ、長年鍛え、戦い続けた体はがっしりとして、日常を繰り返していく内に筋肉がある程度は戻っている。
そんな男らしい体が上気し、浮かび上がる傷痕の数々。痛ましいはずなのに情欲の印に見えて淫らさを上乗せしている。
明るい場所で見る事後の真太郎はひどく扇情的だ。
――ああ、駄目だ。飢えが止まらない。
俺の欲情を受け止めて用を終えたゴムを外し、縛って始末する。それから新しいゴムを取り出して枕元に置いた。
「……詠、士……?」
「今度は顔を見せてくれ。俺で乱れて、悦ぶ顔を……」
理性が戻るよりも先に、俺は真太郎の唇を奪って快楽の沼へと引き戻す。
一瞬、戸惑いで真太郎が強張る。
しかしすぐに俺の舌へ応え、自ら絡んでくれた。
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