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第5-2話二人がかりのアメ

 いつの間にか詠士と似たような思考になってしまった主真を直視できず、私は赤々とした囲炉裏の炭に視線を逃がす。 「……もう充分、二人に甘えているよ。これ以上甘えたら人として駄目になる」  パチッ、と炭の火の粉が跳ねる。  わずかな沈黙の後、詠士と主真が各々に唸った。 「駄目になった慎太郎、か。見てみたいな」 「うん、想像できないから見てみたいかも。多分父さんが思う駄目な人になるぐらいが丁度良さそう」  詠士……君は私を駄目にするためにパートナーになったのか?  それと主真は私を良い風に見過ぎだ。これ以上駄目になってどうする?  私よりも似てしまった詠士と主真に対し、納得できずに私は口を閉ざしてしまう。  そんな私の前に詠士が食べかけのカルツォーネを差し出す。 「まだ食べるだろ? 少しぬるくなって食べやすくなってるぞ」  視界に入れた途端、口の中が魅惑の味を思い出してしまい、唾液がじゅわりと込み上げる。  ……もう胃袋は詠士に掴まれて駄目になっているな。  口の中の欲求には抗い難くなってしまった己を自覚しながら、私は諦めて口を開く。  かじりついた私を見て、詠士と主真が笑う。  ふざけたものではなく嬉しげな笑い。気恥ずかしくてたまらなかったが受け入れるしかなかった。

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