56 / 111
第7-2話炉端の夜は温かく過ぎて
主真から、家から近い大学で、私の仕事の話を聞いて興味を持ったから防災を学びたい、とは聞いている。
しかし私のことを心配して選んだ道だとは思わなかった。
どうも囲炉裏の周りでくつろぎ始めると、普段言わない本音が出やすくなっているのかもしれない。
「主真……君の志は嬉しいよ。なり手が少ないから、目指してもらえると現場にいた人間としては非常にありがたい」
「父さんにそう言ってもらえると嬉しいけど、ちょっとこそばゆいな」
「行こうとしている大学からも、特別講師として行く予定だ。入学したら私の知っているすべてを惜しみなく――」
「気持ちは嬉しいけど、父さんはあんまり本気出しちゃだめだから。たぶん誰もついていけなくなる……」
なぜか主真に困った顔をされてしまう。
首を傾げる私に対し、隣で詠士が小刻みに頷く。
「加減ができないところあるもんなあ、真太郎は。限られた時間に、ありったけの情報を突っ込めばいいってもんじゃないからな」
……思い当たる節があって、思わず私は「うっ……」と声を詰まらせてしまう。
二人の息が合ってしまうと、どうも彼らのペースに呑まれて振り回される。
だが、それもまた嬉しく思えて、私は声を出して笑った。
ともだちにシェアしよう!