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第8-1話朝からパンが止まらない
◇ ◇ ◇
休日、いつもより遅めの朝。
三人で食卓を囲み、焼き立ての丸パンの香ばしい匂いに包まれながら、朝から口の中へ幸せを招いていた。
「どうしよう……朝からどれだけでも入っちゃうよ、このパン」
パンを頬張りながら顔を緩める主真に、詠士がにんまりと笑う。
「いっぱい焼いて帰る時に持っていけるようにしたぞ。独り占めせずに、伯母さんたちにも分けるんだぞ」
「俺、そこまで食い意地張ってないから。ちょっと多めに食べるくらいだし」
確か皿の上にパンが十個以上あったはずなんだが……半分は君一人で食べてるぞ、主真。
高校男子のちょっと多めは、ちょっとじゃない気がするんだが。
心の中で少しモヤモヤしつつ、嬉しそうに食べる主真を見て私は口元を綻ばせる。
食べている最中、オーブンから新たにパンの焼き上がった音が鳴る。
ガタン、と立ち上がった詠士の顔に、より一層得意げな笑みが浮かんだ。
「焼けたか。同じものばかりだと面白くないと思って――」
言いながらオーブンを開けると、パン以外の匂いが一気に漂い始める。
甘く炒めた玉ねぎの匂いを、焼けてまろやかになったマヨネーズの香りが包んでいる――皿に取り出されて食卓に置かれたのは、匂いがしたそれらを巻き込んだ、美味しいキツネ色に焼かれた渦巻き状のパンだった。
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