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第8-2話朝からパンが止まらない

「こういう総菜パンも作ってみた。オニオンロール。どうだ?」  主真と一緒に「おお……」と感嘆の声を漏らした後、ほぼ同時に頬張ってみる。  熱い蒸気とともに、口内へ広がる小麦の香ばしさ。  そこへ甘じょっぱいオニオンソテーと、加熱されてまろやかになったマヨネーズのうま味が舌へ乗る。ああ、塩気が美味い。ほのかなパンと玉ねぎの甘みは飽きが来ない。  ふと斜め前の主真を見れば、焼き立ての熱で頬を上気させながら、「んーっ」と嬉しげに唸っている。固く閉じた目は歓喜の弧を描いていた。 「詠士叔父さん……最高っ。朝からこんな美味しいパンが食べられるなんて……父さんが羨ましいよ」  まぶたを開いた主真が、冗談半分に恨めしげな眼差しを私へぶつけてくる。  こればかりはその通りだから、私は申し訳なく思いつつ笑うしかない。  詠士が椅子へ座り、オニオンロールをひと口食べて「ん。上出来」と味を確かめる。それから主真へ微笑を向けた。 「良かったら作り方を教えるぞ? 料理できるだけで人生潤うから、絶対に損しないぞ」 「でも難しそうだな。叔父さんみたいになるまで、どれだけかかるんだろう……」 「パン生地はホームベーカリーに任せればいい。手順と材料と分量を守れば、大体それっぽく作れる。あんまり難しく考えるな。確か主真は化学好きだろ? 実験と思えば楽しくなるぞ。料理は科学の結集だしな」

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