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第6-1話公私の切り替え

   ◇ ◇ ◇ 「その様子だと、講演は上手くいったみたいだな」  私の顔を眺めながらそう言うと、詠士はズズッと蕎麦をすする。  見知らぬ土地の町外れに佇む、古びた蕎麦処。昼時を少し過ぎた今も席は埋まっており、穏やかな活気が店内に広がっていた。  色が濃い打ち立ての田舎蕎麦。咀嚼して飲み込んだ際の香りが際立っており、流行っているのも頷ける。  口内でしっかりと蕎麦を味わってから、私は詠士に頷き返した。 「反応は良かったと思う。皆、熱心に最後まで話を聴いてくれていた。特に海外の災害で派遣された時の話は食いつきが良かったかな。日本と違って建物の強度が違うから、小さな余震でも一気に全壊することもあるし――」 「コラ。もう仕事の時間は終わりだぞ。公私はちゃんと切り替えないと、長い活動がしにくくなる。今は俺とのデートに集中してくれ」  ぐっ……外で際どい冗談は言わないでくれ。  危うく食べている物を吹き出しそうになったが、どうにか堪えて事なきを得る。  幸い人のざわめきが賑やかで、詠士の低い声は辺りに響かない。一旦息をついてから、私は眉根を寄せながら頷いた。 「分かっている。君がわざわざ車を出してくれたんだ。残った時間はすべて君の時間だ」 「そう言ってくれると嬉しいな。俺としては真太郎にとことん楽しんでもらいたいってだけなんだが」

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