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第3‐1話長い抱擁
私が了承するよりも先に詠士は私へ近づき、抱擁しながら寄り添うように体を横たえる。
淫らに交わっていた時とは違う、優しい温かさが私を包んでいく。
愛しい感触に思わず私も腕を伸ばし、詠士の背中へ抱きつく。すると体温に混じって心音も伝わってきた。
トク、トク、と。少し速い気がする。
軽い興奮の気配を覚えていると、詠士が私の頭へ手を回し、髪や額へ緩やかにキスの雨を落とす。
「ん……抱き締めるだけじゃなかったのか?」
「これぐらいは構わないだろ? 愛してる」
……いつもこれくらいで済まないじゃないか。
また軽い戯れから流されてしまうのかと内心呆れつつ、私は体に疼きを覚えていく。
こんなに密着するなら、深く繋がってひとつになりたい。
そんな欲が湧き出てきて、私の呼吸をわずかに乱す。
いつもなら詠士からの愛撫がエスカレートし、結局最後まで行為に及んでしまうのだが――穏やかな抱擁と、時折交える頭や背中を撫でる動き。ずっとそれだけだ。
体がひどくもどかしい。しかし胸が満ちて、こうして過ごせる時間に大きな幸せを感じていく。
繋がらない代わりに、もっと一体感が欲しくて私は詠士を抱き締める腕に力を込め、肌をさらに密着させる。
……相変わらず力がうまく入らない。強く抱き締めたくてたまらないのに。
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