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第5-1話朝から夢見心地で
◇ ◇ ◇
翌日、朝から体が火照っていた。
頭がフワフワと浮いた感覚が常にあり、しっかり起きているという自覚はあるのに、夢の中を泳いでいるような気になってしまう。
朝食を摂りに台所へ行けば、作業台で小ネギを刻んでいた詠士が振り向く。
「おはよう、真太郎。もう少しでできるから、座って待っていて――」
吸い寄せられるように私は詠士へ近づき、話の終わりを待たずに朝の口づけを押し付ける。
もうこのままひとつになってしまいたい、と節操ないことを考えてしまう。
明らかに大胆になっていることを自覚していると、詠士が私へ軽く舌を挿し込み、舌先を戯れさせてくる。
こそばゆい感触に体中が歓喜して、甘い歓喜の疼きが広がっていく。
もっと深く、激しく舌を絡めたい衝動を覚えたが、詠士の唇が離れてしまう。
小さく「あ……」と残念がる声を私は溢す。
それを間近に見ながら詠士は極上の笑顔を浮かべた。
「積極的に求めてくれて嬉しいぞ。でも、せめて朝は食べような」
「……すまない……自分に歯止めが効かなくて……」
「いいんだ、それで。真太郎からここまで求めてもらえるなんて……夢みたいだ」
羞恥に顔を熱くしてしまう私の頬へ、詠士から小さなキスを贈られる。
そして耳元でそっと囁いた。
「食事が終わったら風呂の準備をするから……夜まで待てない」
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