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第9-2話ギリギリの焦らし

「ギリギリまで、な。そうすれば、もっと俺へ夢中になれる」 「これ以上、夢中にさせられても……」 「何か困ることがあるか? 俺はこんなに望んでいるのに……この中で、感じているだろ?」  そっと詠士が私の下腹へ触れてくる。深々と詠士を抱き込んだそこを意識してしまい、湧き上がる甘い疼きに身の内をくすぐられてしまう。  思わず身じろいで小首を振った後、私は詠士へ頷く。 「う、ん……そう、だな。ずっと熱いままだ……」 「俺はもっと、真太郎にハマりたい……夢中になって、真太郎のことだけしか感じられない時間が、もっと欲しい……さらに濃密に、純度を高めて……な」  私へ言い聞かせるように語りながら、詠士は何度も私の頭を撫で、優しいキスの雨を降らせ続ける。激しい交わりを望んでしまっている体は、ささやかな刺激にも敏感だ。施される度に「ア……っ」と私の唇は艶めかしく喘いでしまう。  ああ、本当に我慢できない。熱くて、もどかしくて、涙が滲んでしまう。  けれど一秒でも長く詠士と繋がれる今が、嬉しくて頭が弾けてしまいそうだ。  どうにか時折、子犬のように甘えた声を出すぐらいにとどめ、私は詠士が動くまで待ち続ける。  中に埋まっているだけで、体の奥深くまで甘い疼きが浸透し、刻一刻と私という人間が変わっていくのが分かる。より自分の中の詠士への愛を濃くし、確実に詠士の心へ絡めたくてたまらなかった。

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