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第10-1話夢中
ぽつり、ぽつりと言葉を交わしながら互いを感じ合い、全身の隅々までどうしようもない疼きを広げた後。
私は詠士を見上げ、何度目か分からない訴えを詠士へぶつける。
「詠、士……まだ、駄目なのか……? もう体が、抑えられない……っ」
強請るようにその背を甘く引っ掻いて望みを告げると、詠士の口端が大きく引き上がった。
「よく我慢できたな……いくぞ、一緒に」
詠士の腰が前後に揺れ始める。大きなものじゃない。体の奥を揺さ振るだけの優しいものだ。
それでもずっと焦らされ続けた体には強すぎる刺激だった。
「あっ、ぁぁっ、アッ……い……ぁぁ――……ッッ」
奥をクッ、と軽く押されるだけで私の体が大きく痺れ、瞬く間に絶頂で肉壁が脈動する。
動かずとも勝手に快感を拾い上げてしまう体には、たったこれだけの刺激も鮮烈だ。
思わず背を丸めて襲い来る快楽の波に打ち震えていると、詠士は胸を私に押し付け、深いキスを与えてくる。舌を絡めればより敏感に詠士を感じてしまい、すべての動作に感じ入ってしまう。
ようやく解禁されたことでも、詠士の動きは緩やかなままだ。
激しく中を前後して快楽を積み重ねなければ、詠士が達することは難しいだろう。
私をどこまでも悦ばせたくてしているのだろうが、自分ばかりというのは今の私にとってはたまらなく切ない。
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