99 / 111

第10-2話夢中

 私は詠士を深く抱き込み、耳元で喘ぎながら訴える。 「え、いじ……っ、もっと、きて……ン……ッ……きみ、も……あァ……っ」 「俺も、気持ち良いから……ずっと真太郎を味わせてくれ……っ」  余裕なさそうに詠士が私の頭を掻き抱き、汗ばんだ肌で包みながら懇願してくる。  こんな必死に求めてくれる詠士が愛おしくて、嬉しくて、辺りに満ちていく熱気だけでも体が感じてしまう。  胸の奥がどんどん広がり、込み上げてくる快楽と想いを吸い込んでいく。  そうやって私の中に住まう詠士がより鮮明になり、私という人間を内側からも抱き締める。  体の奥深くまで甘い疼きは浸透し、どれだけ揺さぶられ、弾けて快楽を得たとしても終わりが見えない。いつもなら耐え切れず溺れてしまうばかりの快感を、今は余裕で受け止めてしまう。  日にちをかけて行った焦らしは、より大きな愛欲を一滴も溢さない器を作り上げるためだったのかと気づく。  それだけ互いにより深く愛し、二人だけの世界へ沈んでいくということ。  これを覚えてしまえば、今までよりも詠士のことで頭がいっぱいな自分になりそうな予感しかない。  もっと節度のある生活を送りたくて、体を交える頻度を減らそうと提案したはずなのに。  さらに取り返しのつかない事態になっていくと分かっていても、昂り切った体は止まらなかった

ともだちにシェアしよう!