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第4話 あの地へ
『今日からお世話になります、東宮雪斗です。まだ半人前ですので色々宜しくお指導願います。』
雪斗は赴任した母校で同じ教員等に挨拶をした。あの幼かった頃の雪斗とは違う。清潔感のある整った黒髪に嫌味のない整った顔立ちにスーツ姿。身体は大学の時に鍛えていた為に綺麗な筋肉がついており、所謂イケメンと言うタイプに育っていた。女教師はそんな雪斗を見て感嘆の声を小さく吐いた。しかし、雪斗はそれすらどうでも良かった。女に興味がない訳でもないのに惹かれる事は人生で一度もなかったのだ。学生時代も付き合ってはみるもののある人物がくれた安心感や愛おしさをくれる者は居なかったからだ。それが桜だった。教員になる事で同性愛者になってはいけないと打ち消したり忘れようと努力もした。けれど、居るか居ないかももう記憶では定かではない桜の事を雪斗は曖昧の記憶の中に残してしまっていたのだ。
『東宮先生、私は三年の担任の若宮静です。東宮先生には副担任をしてもらう事になりました。私も未熟者ですが、お互い頑張りましょうね。』
『あ…はい、宜しくお指導願います。』
『東宮先生?私は保健医の泉、鹿江泉よ。イケメン先生もそんなに緊張しないでリラックスリラックス。もし何かあれば私を頼ってね?一応カウンセリングもしているから。』
『東宮先生!私は…』
雪斗の周りに女教師達が集まる。雪斗はこう言う状況も手慣れたもので、適当に相手をしては逃れる。
『スゲーな、東宮先生モテモテじゃん。』
『ほんっと解りやすくて逆に不憫になるわ。』
『あはは、そのうち普通に接してくれますよ。先生方もこれからご指導宜しくお願いします。』
『いいね〜性格までイケメンじゃん。』
『本当本当、あやかりたいわ。』
男性教員にも雪斗は好印象を持たす事もお手の物。人当たりは本当に上手くなったと自分でも思うくらいだ。まだ春休みで学校は始まっておらず、先生方との挨拶が終わり色々と準備をしてから雪斗は学校を出た。そして、確かめないといけないと薄っすら残る林を探しに行く事にした。昔居た時より店は増え、道路も綺麗になっており、住宅街まで出来ていて辿り着く事に若干の不安を覚えた。それでも行かなければならないと歩を進め懐かしく感じる道を歩き続けた。
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