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ペットじゃねえよ 2

 ーーーー… 「…………ぅ、ん」  窓の外から差し込む光を感じ、俺はシーツを握ってむくりと起き上がる。今、何時だ? 朝というには日が高く、昼というにはまだ早いような、そんな微妙な時間のように思う。  ここが前世と同じく、太陽の登る世界だったらな。 「腹、減った……」  クルクルと鳴る腹の音が、俺に空腹を感じさせる。前世でなら起床後、それを不味いゼリー飲料で満たしてから歯も磨かずに出社していた。不潔もいいとこ不潔。そんな忙しい毎日を繰り返していたもんだが、今となっては懐かしさすら感じる。いい日々だった。  ブラック企業で勤めていた過去を、いい日々だったと振り返る日が来るなんて、死ななかったら絶対に思わなかった。  そう、死ななかったら。 「はあ……」  思わず漏れる溜め息に、俺はぐしゃぐしゃの短い銀髪を前の方から掻き上げた。猫っ毛なのかふわりと柔らかいそれは、死ぬ前の俺とは異なる髪質。リーマンをやっていた頃はろくに洗わず、キューティクルが剥がれて引っかかり放題だったからな。対して滑らかなこの触り心地は、少しだけ癖になりそうだ。  自分の身体であって他人のような違和を感じる。まだ馴染めていないんだろう。生まれ変わった、この身体に。  俺が覚醒するまで、この身体に名前は無かった。それもそのはず。幼い頃に両親は魔物によって殺され、俺は奴隷となった。もしかしたら名前らしいものがあったのかもしれないが、全く覚えていない。  ここは魔物が主となり仕切る世界で、前世では実際に拝むことのなかった魔法とやらが当然のように使うことができる。オークやゴブリン……のような生き物だが、勝手にそう呼んでいるだけで本当のところはよくわからない、そんなあいつらは力が強く、ドラゴンは平気で火を噴いたりする。ただし、人間にはそれができない。  能力といえば前世と同じく、知能が少しばかり高いことくらいで、この世界じゃ犬や猫と同じような扱い。しかし数が少ない為、その分、稀少価値は高い。  たいがい魔物に見つかれば高級食材として食われたり、奴隷として使われたりする。俺も奴隷だったが、当時の主と外へ出た際、強盗に遭った。主は殺され、俺は別の魔物に捕まり、闇市へと売られた。

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