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ペットじゃねえよ 3

 売られた後、俺は獣のように吼えまくり、暴れまくった。それまでの奴隷人生も過酷なもんだったが、働けば飯にありつけたし屋根つきの部屋で寝かせてくれた。主が親の仇であっても、生きる為なら身を粉にして働いた。それでもあのオークションに出たら最後だと、自分にしか聞こえない警報が鳴った。  喉が掠れ、体力は消耗し、やがて俺は死を望んだ。奴隷という身分であっても、男としての誇りはまだ捨てていなかったからだ。  オークションステージへと上げられる中、俺は精神的な死を迎えた。しかし、肉体はそのまま残った為生きる屍となり、別世界で死んだ俺の魂がどういう仕組みか知らんがこの身体に入って蘇ったという……。  とどのつまり、世界の創造主によって弄ばれたんだ。煮るなり焼くなり好きにしろと言ったのは俺だけど、だからといってこんな仕打ちがあんのかよ。もっといるだろうが、他に。重罪人を選べよ。重罪人を。  ともあれ、この世界で奴隷として生きてきた俺と前世で社畜として生きてきた俺の記憶がゴチャ混ぜになっちゃいるが、それもあと半月もしないうちに慣れるだろう。  ……いや、慣れちゃいけねえんだよ。バカか、俺は。慣れるってことは、だ。この「現実」も受け入れなくちゃならねえってことになるんだよ。  社畜時代も無理難題を吹っかけられたし、奴隷の俺も色んな試練を乗り越えてきたさ。でもな。嫌なもんは嫌なもんよ? 耐えられるレベルとそうじゃないレベルってのが世の中にはあるわけ。  そんでこれは、そうじゃないレベルの方だ。  辺りを見渡し、そこに誰もいないことを確認してから短い息を吐いた。安堵の息ともいう。気は抜けないが、この一瞬くらいは勘弁してくれ。  二週間ほど前、俺は闇市のオークションである人物に競り落とされた。

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