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ペットじゃねえよ 4

 ハンマープライスは三億。人間が稀少で価値の高い動物とはいえ、これは相場の何百倍もの価格らしい。意味がわからん。  オークション後、急に態度を変えやがった司会の豚は上玉と言っていた。俺はそこそこツラが整っているらしい。ろくに鏡を見たことがないから、その辺はいまいちわからんが、歳の若さは価値を上げる事由になる。だからって、ここまでの価値をつけられる謂れはないだろうに。俺はこの世界で最も価値のある人間となってしまった。ちなみに単位はエン。聞き慣れた金の単位ではあるが、きっと俺のよく知るあのエンとは異なるだろう。  その三億もの値がついた俺はオークション終了後に新たな主へと引き渡され、逃げられないよう厳重な拘束魔法をかけられ、主が住み処としている屋敷の……今いる部屋へと放り込まれた。  無駄にだだっ広く、白を基調とした明るいこの部屋は、主……「奴」が俺の為にわざわざ用意したものだ。前世の俺が住んでいた1LDKのアパートよりも断然広いここに時計こそないが、その目安となるよう日出と日没の役割を果たす空間魔法がかけられている。前世なら窓を開ければ簡単にわかったそれだが、この世界じゃ終始外にいても暗く濁り、淀んだ空を見渡すことになる。そんな劣悪な環境でもこの身体はしぶとく生きてきたわけだが、人間には陽の光が大事であるとヒト専門家とやらから聞いたらしい。この空間にいれば、たとえ屋根のある部屋の中でも日光を浴びた時と同じ効果が得られるという為、すっかり肌の調子は良くなった。時間を知る為というよりは、俺を健やかに育てる為のものだが……もうほんとスベスベの赤ちゃん肌。なんと都合のいい魔法。  また、食べ物もタンパク質にビタミン、糖質に脂質などの様々な栄養バランスが考慮された物を提供され、軽かった体重もちょうどいい重さまで増えた。  なんと羨ましい! どこかでそんな声が聞こえた気がするが、全くそんなことはない。この状況が羨ましいなら、喜んで替わってやるよ。  俺は逃げたい。今すぐ、ここから。でもそれはできない。  だって俺を競り落としたのは…… 「起きたか? エイシ」

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