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ペットじゃねえよ 12

 うねうねと動くそれは這いずり回る蛇のようで気持ち悪い。蹂躙ならさっきまでのキスも同じだったのに、上と下では感覚がまるで違った。……いや、本来はそうなんだよ。毒されるな、俺! 下はむしろひり出すところだぞ!  しかもスムーズに入りやすいように、指に何かが塗りたくられている。潤滑剤なんて出している様子すらなかった。これも何かの魔法か? ローションのような魔法なんて……ま、まさか、スライ…… 「お前が考えているような有機物ではないよ。……まあ、少しばかり媚薬を混ぜたがな」 「は……?」  頭の中に浮かんだ水色のモンスターを即座に否定され、安堵したのも束の間。その後に続いた単語に、俺は間抜けた声を漏らした。  びや、く? びやくって……媚薬か? 性欲を高めたりするとかいう、あの……  そんなものをなぜ、混ぜる? 理由はあっさりと教えてくれた。 「昨夜、たくさん可愛がってやったばかりだからな。あまり摩擦が過ぎると楽しめないだろう?」 「ぅあぁっ!」  グッと根本まで指を押し込められると、腹の圧迫感から小さな悲鳴が上がった。いや、それだけじゃない。摩れるような痛みが伴い、息が苦しい。  昨夜も散々、この「中」を使われた。その前夜も、さらにその前夜も。  俺は「魔王」に抱かれている。オークションで競り落とされたあの日の夜から……ずっとだ。  孕まなければ同性の方が都合がいいのか、避妊対策はもちろんのこと、性感染症対策すらされずに俺はこいつに組み敷かれる。つまり、生のままされるということだ。「魔王」だからか、感染症の心配は要らないんだろう。  また、デカい図体は見かけ倒しではなく、オスの象徴であるアレは馬並みな上に精力も底抜けときている。当然ながら人間の俺はついていくことができず、果てる度に回復魔法をかけられ強制的に復活させられる。  終わりは決まって、こいつが満足したらだ。もう無理、と俺が泣き叫んでも、普段は優しいくせにそれだけは聞き入れてくれない。  これがこいつを拒む理由だ。それでもまだ、俺が羨ましいってか?

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