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甘い蜜 己の罪 4

 通信魔法。仕事で数日間、屋敷を空けることになった「魔王」は、置いていかざるをえないペットの俺といつでも話せるようにと、この通信魔法を耳朶に装着しているピアスにかけていった。仕事内容は知らない。大方、遠征だろう。  あちらからかけるのはもちろんのこと、魔法の使えない俺でも簡単に扱えるようになっている。この魔法は基本的に通話だけで、文字などのメッセージ機能はない。  緊急時にはこれを介して瞬時にあの男を呼び寄せることもできるらしいが、名前を呼ぶことが条件とのこと。つまり、俺に名前を聞けということだ。もはや隠す気はないらしい……誰が聞くか。  今日で三日が経つが、この男は一日に三回はかけてくる。初日は五回だった。恋人からの連絡なら喜んで相手をするが、相手は俺よりもデカいイケメン野郎だ。とても鬱陶しい。  これで本日、三回目の通信だ。 『そちらは変わりないか? 朝食、昼食ともにちゃんと済ませたか?』  飯の心配なんか、帰ってきた時にゴブリンにでも聞けばいいだろうに。  俺は乱暴に頭を掻きながら、短く答えた。 「ちゃんと食ったよ……です」 『良い子だ』  答えなかったらねちっこいからな。この通信魔法、操作は簡単だけど、こちらからは勝手に切られない仕組みになってるんだよ。  ぶっきらぼうでも返事をした俺に、こいつは満足そうに言った。  良い子って……中身はおっさんだぞ、俺。ほんと、ペット扱いだよな。  自然と膨れる頬に気づかず、またそんな俺の様子を知ることもなく、「魔王」は耳にタコ状態の言いつけを述べ始めた。 『明日の朝には戻るから、それまで大人しくしてなさい。必要なものや望みがあればすべてゴブリン(使い魔)に言いつけること。くれぐれも外には出ないように。それから、今夜の食事もきちんと食べること。いいな?』 「わかったって」  それくらいの知能は持ち合わせてるっての。まあ、普段の反抗的な態度から信用されてないからなんだろうが。 『信用はしているよ』 「え……?」  今の、口に出していたか? 心の中で呟いたつもりだったけど……

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