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んじゃ、好きにさせてもらおうか 3

 思わず緩む口元を直しつつ、俺は自分の口をパカッと大きく開けた。 「あの神木モドキ、なんで舌を抜かれていたんだろう?」 「ああ……アレは俺の身体に移るなり、ベラベラと喋り出して煩かったからな。黙らせる為に千切って捨てた」 「仮にも自分のだぞ……」  ちなみに、マオの元の身体が歳を取らずに今日まで腐っていなかったのは、成長を止めて腐敗防止の魔法をかけていたからとのこと。本当に、魔法ってのは際限がない。  マオの方も、まさかこんなタイミングで自分の身体に巡り合うとは思いもしなかったと呟いた。 「罰とはいえ、新たに生まれ変わったのだから、前世でやれなかったことを片っ端からやることにした。力を手に入れ、知識を身につけ、俺は商売を始めた」 「商売?」  するとマオは、自分の蟀谷をトントンと叩いた。 「魔物よりここが良かったからな。お前は俺を『魔王』と言っていたが、中身はただの商売人だ。商才もあったのか、稼ぎに稼いで今の地位を築いた。この世界でてっぺんといえば、あながち間違っていないのかもな」  うわっ……恥ずかしい!  じゃあ、何だ? 「まおーさま」って言ってたあの魔物、こいつの本名を伸ばして言っただけ? それでなんで消されなきゃいけねえの!? 「消してないぞ、その魔物」 「え!?」 「お前、考えていることがすぐ顔に出るクセ、なかなか直らないな」  綺麗な顔でクスクスと笑われる。俺は赤くなる自身の顔を手で覆い隠した。  ちなみにその魔物は性質上、口が軽いからという理由で配属を変えられただけらしい。何だ……それならそうと言ってくれよ。心臓に悪いわ。  ともあれ、マオはこの世界の財界のトップに君臨することに変わりなく、今じゃ朧気の前世の記憶も参考にしつつ経済を回してきたそうだ。 「通貨がエンなのは、前世の国が円だったから?」 「ドルでも良かったんだがな」  こうやって話していると、やはりこいつがあの神木と同一人物とは思えない。  俺はポロリと漏らした。 「全然、気づかなかった……」 「お前、成績も中の下だったからな」  そんなところは覚えているのかよ。忘れろよ、それは。  しかし、何百年も経つというのに俺のこと……前世での友だちを覚えてくれていたということが嬉しかった。こんなに姿形が変わってしまったというのに。 「よく気づいたよな、俺に」  すると、マオは不思議そうに首を傾げて自分の瞳を指差した。 「お前も髪色と瞳の色が違うくらいで、後は前世の姿と変わりなかったからな。俺と死に別れたあの頃の歳よりもさらに上だったら、気づけなかったかもしれないが……」 「えっ? 俺、前世と変わらねえの?」  パチパチと目を瞬かせると、マオは呆れた様子で手の平から魔法で鏡を取り出した。 「見てみろ」  俺は鏡を手に取ると、改めて自分の顔を見つめた。 「そういや……こんな顔、してたかも……」  久方ぶりに鏡を覗き、俺は自分の顔をまじまじと見た。こっちじゃ奴隷だったから常に汚れていたし、痩せていたからな。それに、前世じゃろくに散髪にも行かず、くたびれたおっさんをやっていたわけだから、少年の頃を思い出せというのが無理な話だ。じゃあ、何だ? 俺って前世でも化け物の言う「上玉」に括られていたのか? 女の子たち、全然寄ってこなかったけど! 「それはお前が、あまりにも美人だったから近寄りがたかったんだろう」 「お、おう……」  そう言われると、なんだか照れるな。  しかし、なるほど……。だから、マオは俺に気づいて競り落としたのか……ん? それでどうして、俺を競り落としたんだ?

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