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第42話
「そんなんでふたりは俺の気持ちをわかってくれのかな?」
「なんども云うけど、潤太はさ、対象にまっすぐなところが長所なんだよ。慈愛さえもっていりゃ、潤太はそのままでいいから。あとはそいつらが潤太を見て、潤太から学んだり感じたりしていくよ。――お前がちゃんと自分を見てくれている、自分は蔑ろにされていない、ってな」
「んじゃ、俺はやっぱり俺の正しいと思うようにやっていいんだよね?」
「なにを念頭におく?」
「それは、愛!」
潤太はぴしっとベツヘレムの星を掲げた。
「そうそう。友だちも潤太から慈愛を習得できれば、お前を嫌うことはないし、そしたら潤太は死ななくて済むな」
「友だちじゃなくて、恋人だよ?」
「あ、あぁ。……そうだったな」
「ふたりともめっちゃすごいんだよ? 俺よりも立派なの。だからもう大丈夫」
潤太の誇らしげな表情 に、一也の口もとが綻んだ。彼はツリーのまえに立つと、いくつか星を取りはずして戻ってくる。
「そうだな。いいか? お互いが相手のいいところを見つけて、真似して競い合え。そうしたらとても素敵なおとなになれるよ。それがお前たちが目指すべく星」
潤太の手のひらに一也は「仲良くやれよ」と小さな星を三つ乗せてくれた。
「そしてもうひとつ。自分の掲げる理想の星」
次に渡されたのは、ひと回り大きい十二面体の星だ。
「あっ。俺を刺したウニ!」
「それさえしっかりしていれば、ちょっとした意見の相違も気持ちのすれ違いも、必ずうまくすり合わせができていくから。――だから潤太は大切なひとたちと、いつも幸せでいられるよ」
潤太は一也を見あげた。
「ねぇ、これ、この星、もしかしてぜんぶくれるの?」
「あぁ。俺からのクリスマスプレゼントだ」
「うわぁい、やった! 一也くん、ありがとう!」
満面の笑みでお礼を述べた潤太のやわらい頬が、一也にゆるく抓まれた。
「だからソレは置いていけ」
彼はそう云って、ワンピースの膝のうえに乗せていたベツヘレムの星をしっかり指さした。
「さぁ、潤太。もう本当に帰ってくれよ? 今日みたいな日に、いつまでも大事なひとを待たせていられないからな。それはお前もだろ?」
「うん」
(きっとあそこに一也くんの恋人が隠れているんだ)
チラッと隣室へつづくドアに目をやった潤太の頭を、ぐっと押さえつけて一也がたちあがる。彼は釘を刺すのを忘れない。
「準備してやるから、お前はここでじっとしていろ。もう動くんじゃない」
「……はぁい」
云われて潤太は口を尖らせた。
ケーキを持った一也がキッチンに消えると、忘れないうちに彼にもらった三つの星とウニをカーディガンのポケットに詰めこむ。
そしてすっかり冷めたココアをグビグビやりながら、キッチンに声をかけた。
「ローソク、忘れてない?」
「はいはい、いまちゃんと入れたよ」
「一也くんはケーキなしのクリスマスになっちゃうねぇ。せっかくのお家デートなのに」
「どの口が云ってるんだ?」
(どんなことするのかな? まぁ一也くんは大人だし。大人っぽいことするんだろうなぁ。いいなぁ。でも、俺たちは高校生!)
彼らのもとに戻ったら今度は毅然とふたりに接するのだ。潤太はグッと膝のうえのベツヘルムの星を握りしめた。あぁ、はやくふたりに会いたい。
「あっ、そうだ! ねぇ、一也くーん! 布巾ちょうだい。身体拭きたい」
「はいはい」
「あったかいのにしてね」
「わかったよ」
首をのばしてお願いすると、じきに濡れタオルが放ってよこされた。それをうまくキャッチした潤太はワンピースを捲りあげる。素肌を空気に晒した途端、ふわっと甘いバニラの香りが広がった。
「こんなこと、恥ずかしくってあのふたりのまえじゃできないよ」
呟いて、俊明にべたべたにされた胸をごしごしと拭っていく。
「もうっ、さきっぽなんて真っ赤っかじゃん!」
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