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【2020/05 教育】⑧ (*)

バスルームの隅にステンレスワイヤーの籠が置かれている。 中には、グリセリン50%溶液、温度計、腸内洗浄用のネラトンカテーテル、最大直径5cm程度のプラグ、ローション、キシロカインゼリー、イソプレンラバーのグローブ。 その横の盥では既にローションを充填した50mlディスポ(使い捨て)シリンジと、グリセリン溶液を充填した50mlディスポシリンジ、精製水を充填した100mlシリンジ数本をそれぞれ40度程に加熱してから密閉して同じような温度の湯に浸してある。 扉をノックする音がして、ユカが「失礼します」と鈴のような声で言って、猫のように音もなく入ってくる。 「足りてないものはないですか」 「こんなもんでいいよ、あとおれの鞄から薬とか入れてるポーチ出して洗面台置いといて」 ちょっと笑って、からかうように「相変わらず冷静ですね」と言った。 「ポーチ取ってきますね。お荷物、旦那様のお部屋に運んでおきましたので」 また猫のように足音を立てずに出ていく。 洗面台に何か置く音がして、ややすると完全に人の気配が無くなった。 体を洗ってから、浴槽に10分ほど縁に肘をついて浸かる。 肩からお湯が出る機能はちょっと気になるが、ことが終わって帰る前どうせ入るから試すのはその時でもいい。 浴槽を出て、立て掛けてある半畳ほどの大きさのバスマットを敷いて、椅子に座る。 このテの椅子がAmazonで介護用品で売られてるのを見たときはちょっと面白かったな、でも実際使えるんだよな、などと思い出していた。 グローブを嵌め、掌に100円玉大にローションを出し、キシロカインゼリーを少量混ぜる。 指にとって、背後から手を回し穴に馴染ませる。 昨日一旦拡げられたそこは数度甘揉みしただけで口を開けた。内部からガスが抜けたが行為の際入った空気なのか、単に腹に何も殆どなかったからか、匂いはない。腹圧を下げる為の排尿も必要なさそうだ。 グリセリン溶液が充填されたほうのシリンジをパウチから取り出して腸内洗浄用のネラトンカテーテルを接続する。 丸くなっている先端を直腸まで挿入し、少しずつシリンジを押して注入した。 注入を終えたら、スマートフォンのアラームを1分半後に鳴るよう設定し、再び浴槽に半身浸かる。注入にかけた時間を含め計3分。それ以上はプレイに支障が出る。 そもそも昨日昼の分を吐いてからも特に補填はせず、その後も決めた時間に同じようなメニューを摂ったので食事らしい食事はしていない。 出すほどものも入っていないんじゃないかと思うが、昨日ハルくんはゴムつけなかったから、洗っておくに越したことない。 バスルームに反響するアラームを止めて、バスルームから出て、脱衣所を挟んで向かいにあるトイレに入り、腹を押して口から息を吐くようにしてすべて排出する。 これと精製水を入れたシリンジ2回で3セット。 予想通り、申し訳程度の量で、排出する液体が濁る程度だった。 流してバスルームに戻り、新たにカテーテルをおろし今度はローション50mlを充填したシリンジを取り出す。 先程より深めにカテーテルを挿入してシリンジを押す。少しずつ引き出しながら行き渡るように注入していく。カテーテルを抜くのと入れ替わりにプラグを挿入して完了。 湯を捨てた盥に使い終えたものを適当に放り込んでバスルームを出た。 洗面所でグローブを外し、手を消毒成分入りのハンドソープで洗い、アルコールジェルで消毒して、ローブを着る。 歯を磨いて、リステリンで口内を濯いでからポーチの中の小さい風邪薬の空き瓶を出し、昨日授業前に外し忘れ、取り急ぎ仕舞っておいた舌ピアスをピンセットで取り出す。バーベルのボールを1つ外し、小さい鏡で位置を確認して軸を押し込む。ネジ状になった先端がホールの粘膜を擦って僅かに傷つけたのか、血の味がした。 小脇にスマートフォンを仕舞ったポーチを挟んでボールを付け直しながら絨毯敷の廊下を歩いて征谷の寝室に向かう。 今月はあと来れるかわからないから、この一回で25万円分。 怖くないわけではないし、冷静なわけがない。

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