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【2020/05 教育】⑩ (*)

「ほらまたそうやって…嬲ろうが虐げようが叱ろうが罵ろうがお前からしたらご褒美でしかない」 再び背凭れに体を預けて脚を組み、爪先をおれの目の前に差し出す。 「反省してんならご奉仕くらい自発的にやれよ、やる気がないなら帰れ」 足の指を口に含み、それぞれの間に舌を挿し入れて舐ぶる。足の甲を伝いくるぶしの内側の皮膚の薄いところを舌先を這わせる。 目線を遮る前髪を掻き分けて覗き込んでくる。 「そんな涎垂らしてしゃぶる程好きか、うっとりしやがって」 そう言いながら、髪の毛の奥にある傷痕を親指で慰めるかのように優しく繰り返し撫でる。 舐めるのをやめて顔を離し、横に振った。 こういうとき、変に優しくされると萎える。 「いいから、手を出しなさい」 椅子の横の籠からナスカンの付いた革のリストバンドを足元の籐籠から出し、おれの手首に巻く。 左の腕を埋め尽くす傷痕を悲しそうに見て、感覚がない部分にそっと口付けた。 「脚にも巻くから立ちなさい」 促されるまま立つと、ベッド脇に連れて行かれ、腿と足首にも同じようなものを装着される。 そして首輪も。 リードを付ける為の輪の部分に指をかけて引く。 「上がって、いつもの姿勢で待ってろ」 ベッドの上で転がり、頭を下げて布団の上に顔を押し付けたまま、膝を立てて脚を拡げて尻を突き出す。 何やら徳永と話すのが聞こえる。 「なんでおれがやるんですか」 「それはお前が一番わかってんだろ」 このあとの展開は見えてきた。 おれたちは契約して25年。征谷はもう今年で還暦を迎える。勃たないわけではないが挿入するには十分な硬さにならない時もある。そういうときはだいたい徳永が巻き込まれる。 徳永がおれを憎からず思っていることも、徳永がけしかけられたら余裕なくがっつくことも、おれが乱暴に犯されるのが好きなのも踏まえてだ。 戻ってきた征谷が腿のナスカンに手首のナスカンを繋いで固定し、耳元で囁いた。 「ふみにヤラれてんの撮ってやるよ、撮ったのふみに売りつけてその分も小遣いにやるよ」 連れられてきた徳永が、さっきまで征谷が座っていた椅子に乱雑に服を脱ぎ捨てながらおれを濡れた目で見ている。 「あぁ、ほら見ろ。わかるか?お前らおんなじ目ぇしてるぞ」 目線を送り、顎をしゃくる。 カネで買われて傅いてる立場のくせに、主が指図する前に、微かに顔を上げて番犬を顎で呼ぶ情婦なんざ、最高に腹が立つに決まってる。 予想通り、容赦なく脇腹を蹴飛ばされ、頭を掴んでベッドに押し付け沈められた。 「調子に乗ってんじゃねえぞ、このクソアマ」 息は荒くなっていくのに、柔らかな繊維の中に埋もれてうまく呼吸できなくなって、意識が飛びそうになる。 そうだよ。もっとキレて本気で罵れ。 脚を抱えるように持ち上げておれの尻の肉を強引に開く。怒りに任せてプラグを乱暴に引き抜いて、一気に根本まで体重をかけて突き入れられ、衝撃でえずくような声が漏れた。 興奮で張り詰めた前立腺から結腸手前の神経の束が走る辺りまでを執拗になぞられ、行き来するほどに括約筋から腹の奥の筋肉、腿や膝までが痙攣して応える。 激しい出し入れで中に仕込んだローションが音を立て、引き抜くたび掻き出されて溢れ出る。 平均より長くカリ高の徳永のモノは既に限界まで硬くなっていて熱く脈打って先走りを中で垂れ流しているのを感じる。 吐息混じりに、きれぎれに小さく喘ぐと髪の毛を掴んで征谷の方に向かせた。 「オヤジが見てんだろ、かわい子ぶってねえで声出せ」 立ったまま上から撮影しながら、征谷が見ている。 「玲、いつも言ってるだろ?ここは存分に声を出していい場所だよ、口を開けなさい」 徳永の指が強引に口を割って舌下を押さえつけて開く。口角から涎が滴り顎先から伝って落ちる。 自分のものとは思えない嬌声が部屋に反響した。 自分で自分の声にひどく興奮を覚える。 身を捩り、繋がったまま体位を変えて仰向けになると徳永がおれの腰を持ち上げて引き、上から抉るように中を掻き回した。 その動きに合わせて無意識に腰を振って自分がほしいところに徳永を誘導する。 覆い被さった徳永はおれの眼前に余裕のない切なげな表情を晒し、何か言いたげに口元を動かすと、何か声に出さず呟いた。 こうなることはわかってた。 愛しさが込み上げて名前で呼んで囁く。 「ふみ、おれも好きだよ」

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