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【2020/05 業】⑧

《第二週 金曜日 昼》 無事に引渡が終わり、飯野さんに報告を入れて、先生の書庫に先に戻った。 戻るなり、小曽川さんにまた「変なことされませんでした?」と訊かれ、一気に緊張が解けて、思わず声を出して笑ってしまった。 「大丈夫ですよ、もうちょい信用してあげてください。おれ結構緊張してそれどころじゃなかったですし、先生も冷静にやってましたから。あ、今回は解剖自体は行わずに済んだんですが病理診断に回してて今は結果待ちです」 「まあ、そりゃあの人も流石にご遺体を前にしてスケベしようとは思わないか…あ、シャワー行くときとかロッカーとかで襲われたりしてないですか?あの人にとっちゃ格好のラッキースケベポイントですよあんなん」 小曽川さん。言えてないですが、どっちかというと、ラッキースケベだと思うのは初日の首筋のアレなんですよ。 「お昼どうします?」 「あの人病理の結果出るまでまだ戻ってこないでしょ、今日は此処で食べようかなあ」 学食に行ってくることを伝え、先生が先に戻ったら学食に行くことと一時間以内には戻ることを言伝するよう頼んで外に出た。 先生、解剖室でさっき「お仲間」って言った。先生もやっぱゲイなのか。 あの感じだと付き合った数それなりにいそうだし、あの様子だと、今付き合っている人はやはりいるんだろう。 この見学期間が終わったら個人的に二人で会ってサシで話をしてみたいけど、難しいかもしれない。 大石先生は藤川先生と付き合い長そうだったけど、いつからの知り合いなんだろう。 大石先生にダメ元で藤川先生自身には直接訊けなそうなことを訊いてみたい気がする。来週の講義のある日会えたらいいな。 軽く昼食摂って、コンビニでカフェラテを買って書庫に戻った。 「おかえりなさーい、先生戻ってますよ。ちょっと寝るって言ってました」 寝るの?こんな白昼堂々と?そんなカジュアルに?自由すぎない? 「先生いつもこんな自由なんですか?」 「自由っていうか、仕事はするけど生活は何もまともにできないんですよ不規則だし、しかも燃費も悪いし…まあおれも人のことはあんま言えないんですけどね…」 燃費ってそんな、車じゃないんだから。 「とりあえず起きてくるまで自由にしてていいと思いますよ、おれ、15分経ったら起こしてっていつも言われるんですけど、あの人一旦寝ると中々起きないし、実際電話かけて起こしても15分位はグニャグニャしてるから1時間くらい起こさないですもん」 「文句言われないんですか?」 「何回も起こしたのに全然起きなかった、先生が悪いって言うんですよ。先生だいたい寝起きの記憶曖昧だからそれでイケます」 この先生にしてこの助教ありって感じがしてきた。

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