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【1993/12 Can you kill me】⑩ (*)(●)
喉から一旦引き抜くと、感触を確かめるように再びゆっくりと挿し入れられる。傍らにある直人さんの膝を苦し紛れに、しかし爪を立てないよう掴んだ。その手を引き剥がして両の手首を束ね抵抗できない状態にした上で、中でスライドさせる。
熱帯びたそれは咽頭を抜ける度に音を立てた。自分の顔が顔の各部位から分泌される様々な液体でグシャグシャになる。その顔を見て直人さんは引き抜き、おれの胸に精を放ちニヤリと笑った。
ようやく呼吸が開放され、肩で息をしながら涙目で直人さんの顔を見上げると、やさしく頬を撫でて「本当にかわいいなあ、これから少しずつちゃんと喉使えるように躾けてやるからな、玲」と囁いた。
風呂上がりにおれが体を拭いていたタオルを手にとっておれの顔を拭うと、抱き起こしてベッドの上におれを運び、そっと下ろしてそのタオルを被せた。
「お前はもう休むといいよ、吐いた分ちゃんと水分の補給して寝なさい」
そう言うと買い物袋から青いラベルの付いた瓶を取り出してこちらに放った。
「直人さんは?」
「おれはいいよ、一杯引っ掛けてから寝るから」
直人さんは椅子の背に掛けたままだった衣服をクローゼットに片付けて、バスローブを再び着ると、スキットルボトルから直に酒を飲んだ。そして床にあったタオルや防水シート、テーブルの上にあった道具を片付けながら、合間に少しずつ酒を口にした。
「今回はこれでおしまいですか」
問いかけると笑って「そんな訳無いだろう」と返す。
「明日は明日でもっと面白いことをしたいんだよ、朝になるのを楽しみにしてなさい」
しかし、寝なさいとは言われたものの、合間合間に落ちてしまっていたので、なかなか眠気がやってこない。
「直人さん、なんか子守唄代わりになるような面白い話とかないですか」
「おれは大した学もないし、ヤクザモンだから言えない話も多いからなあ。寧ろおまえに色々教わりたいくらいだよ」
起き上がって改めて布団の中に潜って寝直す。
「例えばどんな話がいいですか?」
「なんだっていいさ、聞かせてくれよ」
少し考えて、おれはこないだ師事したい教授に会いに行って聞いた記憶というものの取り扱いの仕組みを、自分が記憶を失くした経緯に絡めて話した。夢中で話しているうちに自然と冷えていた体が暖まり、少しずつ眠くなってきた。
「無理しなくていいぞ、明日があるんだから」
何気なく言われた言葉に、夢うつつながらおれは一つ問いを返した。
「眠るとき、もうこのまま目が覚めなかったらどうしようって思ったことありますか」
「さあ、無いかもなあ。そこまで想像しないよ。玲は寝る度そんなこと思ってるのか」
直人さんはうとうとし始めたおれの頭を撫でて「大丈夫だから、ゆっくり休みなさい」とベッドサイドの照明を消した。
眠りに落ちゆく中、無意識にいつもの癖で唇の裏の粘膜を噛み、剥離した箇所から滲み出る血を舐めた。その奇妙な安心感を存分に味わってから、溢れた血をブランケットの内側で半分寝ぼけながら拭った。
朝、目が覚めてもなんとなくなかなか起きれなかった。思ったより消耗したんだな、と思っていたら直人さんが「おはよう、玲。準備をするよ」と棘が無くなるまで鞣してた荒縄を取り出して、腕を掴まれた。
後ろに組んだ状態で縛られ、そのまま再びブランケットや布団を被せる。
「ちょっとロビーにうちのモン迎えに行ってくる、おとなしくしてなさい」
直人さんが出て行き、拘束されたまま部屋に残されたおれは、言われるまま布団の中にこもっていた。すると誰かを連れて直人さんが戻ってきた。再び徐に布団を剥がされる。
「玲、起きろ、うちの若い奴にお前やらせるぞ」
そこにいたのは、昨日ラウンジで直人さんの隣りに座っていた金髪の少年だった。
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