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【1989/05 komm tanz mit mir Ⅱ】⑪ (*)

結局、次に目が覚めたらもう9時を回っていた。掃除機をかける音にアキくんが魘されている声で目が覚めたのだった。 二人揃って寝間着を着直して洗面所に向かうと、廊下でお母さんは掃除機をかけたりモップをかけていて、お父さんは洗面所や浴室を掃除していた。 お母さんはおれたちをみるなり「ふふ、ふたりとも髪の毛ぐちゃぐちゃ」と言って笑った。お父さんは「ちょうど掃除したとこだけど、使っていいよ」と言って片付けてタオルを用意していってくれた。 おれはもう肉体関係があることを知られていて、尚且つ気遣われているのもわかっているのでなんとも言い尽くしがたい恥ずかしさとか背徳感があるんだけど、アキくんは気づかれていることは察してるんだろうか。 「ねえ、アキくん。おれたちのしてること、知ってるっぽいよ」 「えっ、だれが?」 アキくんは目を丸く見開いてキョトンとして首を傾げた。 「お、お父さんと…お母さん、も…」 小声で言うと、アキくんは本当にまったくもって察してなかったらしく、ちょっとしたパニックになった。 「え、どうして?なんで?なんで?」 おそらくアキくんは、おれに出会ってからの自分の行動の変化には全く気づいていない。まったくかわいいな。抱きしめて背中をトントンと叩いた。 「なんでだろうねえ。でも大丈夫だよ、だから一緒に入ろ」 ちょっと納得のいかなそうな顔をしているアキくんの寝間着を脱がせる。そしてそこでおれは自分が行為の最中、如何に理性が吹っ飛んでいたかを知った。 アキくんの首から肩の当たりまで、咬み付いた痕と内出血が所々、というか結構な数あって見るも無残な状態だった。 「アキくん、痛いところとか、ない?」 おそるおそる尋ねると、アキくんは「なんかちょっとかゆい」と内出血した辺りを触った。 「ご、ごめんね…」 謝るも、アキくんは鏡を見ないので状態がわかっていない。どうしよう、内出血を治す薬ってあるんだろうか。ギリギリ詰襟やシャツの襟で隠れて見えないかもしれないけど、この状態で学校行くのはまずい気がする。後で相談しなきゃ。 手を引いて浴室に入り、シャワーを出して室内が暖まるのを待つ。掃除のため換気していたせいか少し寒い。 浴槽の縁に腰掛けていると、アキくんが目の前で膝をついて座った。 「ハルくん、夜ね、舐めてくれたでしょ?」 ああ、そういやそうだった。あのときの反応の仕方、やらしかったな。 「アキくんもハルくんにあれしてあげる」 「え」 今度はおれが驚く番だった。 「ちょっとまって、心の準備が…洗ってからでいい?」 一旦立って、十分お湯出ているのを確認してからシャワーを浴び、石鹸を手にとって全身を手で泡立てて手早く洗う。 「ずるーい、アキくんだって心の準備なんかなかったのに」 ほっぺたをぷくっと膨らませてアキくんがこちらを見上げている。 「だって、さっきまだ続きしたそうだったのに~」 そうだよ。それはそう。否定できない…。 「しないとは言ってないでしょ」 手を伸ばして、膨らませた頬をきゅっと潰すとアキくんは笑った。 おれはシャワーヘッドを低いほうの金具に引っ掛けて、アキくんが居る浴槽の方に少し向けた。おれは入口側の壁に立って、浴室のドアに鍵をかけた。 「アキくん、おいで」 立ち膝で這ってきたアキくんが左の手で、おれの右手を掴んで腹部に顔を寄せて、脇腹の方から少しずつキスする。右手でおれのものを弄び、包皮を押し上げて口に含み、舌で包んだ。 中に入れたときとはまた全然違う。 上顎の凸凹や舌のざらついた感触、ぞれぞれの粘膜が生き物のように絡みつく感じも、筋だったところを添えられた手が繰り返し撫で上げるのも、時折先端の孔を舌が掠めたときの強い快感も、身動きできないほど気持ちいい。 目を閉じて味わっていたアキくんが目を開けて、今まで見たこと無いような妖艶な表情でおれのものを下から舐めあげて、頬ずりするのを見つめる。 「ハルくん、もっかいしたい?」 おれには肯首する以外の選択などなかった。

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