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第6話
今日は暑い。
じっとりと蝉が鳴いている。
道には陽炎。
学校指定の白シャツは襟にうっすらと汗がにじんでいた。
夏休みだがまだ一年生なので講習はない。部活のほうは……まあ、なんというか、いろいろ自分の中で折り合いをつけてすでにひとつの答を出していた。
俺はサッカー部を辞めることにしたのだ。
決意をしたら行動は速かった。
練習日である今日の朝一番でキャプテンを捕まえ、顧問にもコーチにも了承を得た。部員のみんなにきちんと話をして頭を下げ、挨拶をした。
少し寂しい気もするが後ろは向かない。
俺は新しい決意に燃えていたのだ。
今後俺は愛に生きる。
高校恋愛デビューだ。
園芸部に入って利休先輩と仲良くやるつもりだった。
つまり、すっかり俺は利休先輩に惚れちまっていたのだ。
自覚したら昨夜はよく眠れなくなった。指と指が触れ合った時のかすかな温かさとか、声とか、笑顔とか、頭を撫でた時の感触とか……そういうのが俺を寝苦しくさせた。
ふっくらとした頬っぺたを思い出してちょっといやらしい気分にもなった。
明方、甘く切ない夢にうなされた。うなされるのが心地よかった。
利休先輩はかわいい。
小っちゃくてぽっちゃりとしてて好みだ。
きっと腕の付け根のとこなんてぷよぷよしてて触り心地がいいんだろうな、と勝手に想像してみる。
それに園芸部で一人で頑張ってるとこも、健気でいい。
男だけど、好きになってもいいよな。恋をしてもいいよな。先輩を手に入れていいよな。
これは俺の感情だ。誰にも止める権利なんてないのだ。
サッカー部を退部したその足で校舎脇の花壇を目指す。
そこには利休先輩の姿はなかったので、コンビニで買った菓子とお茶の差し入れを持って園芸部の部室を訪ねた。
夏休みということで部室棟に人気は少ない。
「ちーす」
声をかけながら引き戸を開ける。
「利休先輩いますかぁ」
昨日見た光景と変わりない室内。
肥料やスコップが壁に寄りかかり、横長テーブルが二つに椅子が四つ。テーブルを超えた奥には二人掛けのソファーがある。そしてそこには利休先輩がいた。
いたはいたのだが、あまりの眺めに俺の脳みそはフリーズする。それから、もの凄い反射で一気に沸騰した。
ガッと眼をひん剥いて先輩の姿を凝視する。
すごい、凄すぎる。
先輩は……下半身を裸にしてソファーに乗っていた。ソファーに胸を伏せ、膝をついて尻を上げている。後ろにつき出した尻のその中心に、あらぬものが顔を出していた。
キュウリ。
白くぽっちゃりした尻の穴からキュウリがこんにちはだ。
位置からして間違いなくずっぽり入ってる。
入ってる。
これって、はるか噂に聞く野菜オナニーって奴か。
その大胆さとマニアックさとに俺は茫然となってその場に立ち尽くした。
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