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第30話

 先輩の上半身を裸に剝いたころにはすでに俺の息は上がっていた。  熱が身体の中から溢れそうでシャツの前を開く。せっかちなスピードでタンクトップも脱ぎ捨てた。  先輩の眼が見開かれる。 「凄い、腹筋がこんなにはっきり分かるなんて」  垂涎のまなざしが俺の腹に注がれている。 「触ってもいい?」 「先輩いつも遠慮してるけど……、俺もう先輩のものだから好きにしていいですよ」 「僕のもの?ほんとに?」  そして嬉しそうにふふっと息を吐いた。  怖々手を伸ばし俺の胸から腹へと指が辿る。くすぐったい。 「ねぇ、凄いね。引き締まってて、触り心地も硬くって……。那須くんは美術室にある彫像のような整った身体をしてるね。カッコいいよ。見てるとドキドキしちゃう」  それは興奮してしまうという意味だろうか。  飾らない言葉で褒められて、単純な俺は自慢したくなった。 「体脂肪率は12くらいかな」 「それって凄そう」 「プロのサッカー選手だとひと桁代の人もいるんですよ」 「へぇ~」  感心した声の明るさにこちらがなごむ。  眼をくるくる動かして興味津々の様子だ。  生き生きとした表情。  ぽわんと丸く赤い頬。 「那須くんはホントにカッコいいよ。那須くんと恋人同士だなんて今でも信じられないよ」  自分の言ったことにさらに感動したのか、声を詰まらせる。 「僕を恋人にしてくれてありがとう」 「どういたしまして。こちらこそありがとうございます。好きですよ、先輩。俺にも先輩のこと触らせてもらえますか」  望みの深さに喉が渇く。  利休先輩はこくりと頷いてくれた。 「僕は君のものだよ。好きに触っていいんだ」  互いが互いの身体をまさぐり合ってその熱を確かめる。しっかりと抱きしめ合った。  俺の腕の中でじっとしている小さくて抱き心地の良い身体。顎先に当たる柔らかい髪。浅い呼吸を胸板に感じる。手はしどけなく俺の背中にまわり、遠慮がちな力で触れてくれていた。 「先輩、横になりましょうか」  注意を払いながら、柔らかくぽってりとした身体をベッドにそっと寝かせる。  俺は手を先輩の顔の横につき、上から覗き込んで言った。 「今日は最後までしたいです」 「うん、僕もだよ」  先輩は恥ずかしそうに、けれど眼をそらさずに、俺の希望を受け入れてくれる。 「我慢するから、努力するから、きっと最後まで出来ると思うよ」  どこか悲痛な覚悟の言葉に俺は顔を歪めた。 「なるべく自然に出来るといいんですけど……」  痛くないようにしたい、出血沙汰など論外だ。  俺は先輩の衣服をさらに脱がせていく。 「腰を浮かせてください。ズボン脱がすから」 「う、うん」  協力し合って行為を進める。  先輩の下肢は照明の元に余すところなく晒され、俺の心臓はバクバクと鳴った。  かわいい。先輩はそう言われるのが嫌いだと言うが、どう見たってそれはかわいかった。  先輩のチンポはプルプルと震え、俺の愛撫を待っているようだ。  興奮に手がわなないた。 「気持ちよくしますから」 「うん」 「ゆっくり……、痛くないようにしますから」 「うん」  信じ切っている返事に感謝する。 「僕、那須くんと繋がりたいよ」  望みをはっきりと口にして、それでも少しだけ不安気に先輩は眼を閉じた。 「お願い。しっかり僕を抱いて……」  懇願され、俺はうれしさと共に責任感のようなものを感じる。 「大事に抱きますから、怖がらないで」  囁くように言ってから、そっと先輩の手を取る。言葉通りの心がけを示す為に、手の甲に誓いの唇を触れさせていた。

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