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第33話

 ベッドに寝転がり俺たちは向かい合う。  幸せで仄かなまどろみを超えてごく近くから顔を見合わせた。  どちらともなく照れくさい笑顔が浮かんでいる。 「うまく行きましたね」 「……うん」  よかった。先輩の様子を見る限り満足してくれてるみたいだ。 「まだ胸がドキドキしてるよ」  そういって俺の胸に自分から顔をうずめてくる。 「那須くんありがとう。僕もう怖くないよ。これからはきっと自然に那須くんと愛し合えるね」  胸元でしゃべられてくすぐったかった。 「先輩は?先輩はよかったんですか」  そっと髪を撫でる。  細いそれを指に絡めては放す。  この細い髪で俺の存在は縛られてしまったみたいだ。  先輩のかわいらしさに俺はやられてる。 「凄かったよ……。那須くんに翻弄されてなんだか身体が浮きそうになった。あんなのはじめてだよ」  興奮気味に語る頬がまだ上気している。  眼も潤んでいて色っぽい。 「俺も、こんなに興奮したのははじめてです」  慌てたのも、ドキドキしたのも、ハラハラしたのも、どれも大変ではじめての経験だった。  そしてようやく先輩と繋がることが出来た。  この感動はなににも勝る。  これで正真正銘俺は先輩の恋人になったのだ。 「すっげぇ幸せです」 「うん、僕もだよ」  二人だけの秘密の空間でそっと微笑み合う。 「もう今後は野菜はなしですよ。俺が、俺だけが、先輩を感じさせますから」 「分かってるよ。もう野菜はいらないよ。僕は君がいればいい……」  噛み締めるように言った。瞳が強い意志に煌めいている。 「ありがとうございます。ホント大好きですよ」  俺は先輩のはんなりした頬をさらに赤く染めようと、強欲な唇をそこに押し当てていた。

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