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第5話

潮の香りを胸いっぱいに吸い込んで歩き出す。 少し歩いて年代物の扉の前に立つ。 もう我が儘は言いません。 どんな事だって耐えます。 だから神様・・・・・・・・・ 大きく息を吸って ゆっくりと扉を開けた。 ステンドグラスから差し込む光が眩しくて目を細める。 神様はどこまで僕を焦らしたら気が済むんだろうか? ゆっくり歩を進めて祭壇の前に佇む。 手にした荷物を置いて十字架を見上げる。 「僕の願いは、聞いてはもらえないのでしょうか?」 十字架を背負いうなだれる主に問うても返事なんて返ってこない。 諦めた方が・・・・・・・・・いいのかな? らしくなく弱気な僕がそこに居た。 ✱✱✱✱✱ どのくらい佇んでたんだろう? 気付けば日はもう西の空に傾き始めてた。 「時間切れ、ですね。」 腕の時計を見る。 そろそろ空港に向かわなきゃ。 僕を信頼して背中を押してくれた人を裏切れないから。 その場に跪き祈りを捧げる。 来ない事は解ってた。 ここに来たのは悠仁に会いに来たんじゃなくて ウジウジ帰らない人を待つ自分とサヨナラする為。 「ありがとうございます。これで綺麗サッパリ諦められます。」 負け惜しみじゃなく本心を呟いて主を見上げると僕は立ち上がった。 未来に歩み出す為に。

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