6 / 8
第6話
小さなボストンバッグを手に歩き出す。
数歩歩いて立ち止まりもう一度十字架を見上げた。
“頑張れ”って言われた気がして微笑むと年代物の扉に手を伸ばした。
「見つけた。」
押した筈の扉の感触を手に感じる前に
僕の体は懐かしい甘い匂いと一緒に暖かい温もりに包まれてた。
「ゆう・・・と?」
苦しいくらいの締め付けの中口を開けば
耳元で小さな返事が返って来た。
「本・・・物?」
「当たり前だろ?それより何なんだよ?あの暗号めいたメールは。」
僕を抱き締めたまま悠仁が聞く。
暗号、めいてたかな?
「“あの教会で待ってます”だなんて・・・どこの教会なのかいっぱい考えたよ。」
あまりのヒントの少なさに少しだけ反省する。
でも。
「ここだって・・・解ってくれたんですね?」
それだけで僕は満足だった。
「たくさん教会とか今まで行ったけどここは特別だからな?」
仕事の合間にたまたま2人で見付けて入った場所。
その時交わされた果たされるかも解らない約束。
それを覚えててくれた。
それが嬉しかった。
ともだちにシェアしよう!