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第6話

小さなボストンバッグを手に歩き出す。 数歩歩いて立ち止まりもう一度十字架を見上げた。 “頑張れ”って言われた気がして微笑むと年代物の扉に手を伸ばした。 「見つけた。」 押した筈の扉の感触を手に感じる前に 僕の体は懐かしい甘い匂いと一緒に暖かい温もりに包まれてた。 「ゆう・・・と?」 苦しいくらいの締め付けの中口を開けば 耳元で小さな返事が返って来た。 「本・・・物?」 「当たり前だろ?それより何なんだよ?あの暗号めいたメールは。」 僕を抱き締めたまま悠仁が聞く。 暗号、めいてたかな? 「“あの教会で待ってます”だなんて・・・どこの教会なのかいっぱい考えたよ。」 あまりのヒントの少なさに少しだけ反省する。 でも。 「ここだって・・・解ってくれたんですね?」 それだけで僕は満足だった。 「たくさん教会とか今まで行ったけどここは特別だからな?」 仕事の合間にたまたま2人で見付けて入った場所。 その時交わされた果たされるかも解らない約束。 それを覚えててくれた。 それが嬉しかった。

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