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第7話

7 召喚の刻 「……待て!」  ウィルビーがこちらに手を伸ばし、制止しようしているのが視界の端に見えた。  異変に気づいたか。  慌ててる。ざまあみろ。  間髪入れず、俺はウィルビーの前から――白い光の異空間から、シュッと消え去ってやった。  至った別の空間は、今度は黒一色だった。  周囲すべてが真っ黒なのに、自分の手足や服装は陽差しの下にいるようにはっきりと見える。  しかも、少し離れた先には、黒一色の中に蠢く「黒」がちゃんと見えている。  その「黒」はゆっくりと人の形を成し、さっき見た黒い靄人となって俺の目の前に佇んだ。  全身のあちこちからチリチリと静電気のような小さな閃光を発し、それが納まり始めると今度はごぼごぼいう音が起こり、やがて少しずつ、「声」になっていく。  頭の中に直接響く、フロゥと話すときのような声だ。 ――ふざけた奴だ。   威圧感のある、重い声。だが、対峙していても不思議と恐怖はなかった。自分の身に取り込んだものであるという一体感なのか、それとも、もともと俺にこの世ならざるものと付き合う資質があるからなのか。  「悪ふざけなら、お前と相棒のほうが上だろう」  黒い靄人の顔にあたる部分に、カッと、大きな両目が現れた。これはちょっと、びびった。 ――お前のほうが相当ふざけた奴だ。その霊力の高さ、何者だ。 「知らん。皆んなそんなこと言うけどな、うちは……ちょっと霊媒体質の家系なだけだ」 ――普通ならば俺との同化に苦しみ、数日はのたうちまわって苦しむものを。面白い奴だ。……あいつが興味を持つのもわかる。  笑ったように思えた。 ――しかも、俺と、取引とぬかしたか?  「そうだ。お前を取り込んだ俺は、何でも願いが叶うんだろう?」 ――ならばそれを使って好きにすれば良い。取引など、無意味だ。 「そうは思わないね」 ――何も望みがないのなら、今すぐ魂となりて去り、その身を俺に譲れ。  同化した効果で、俺は悪魔と自分の間に、精神的な接続ができたことを感じていた。手に取るようにわかるわけではないが、奴から感じるニュアンスがある。 「望みたいことはあるさ。――お前もだろ」  俺は自分が思う条件を思い浮かべた。話すより思考のほうが速い。それに膨大な情報量を送れる。 「迷う時間はないぞ。わかるだろ?」  自分が感じ取っている状況の変化を、相手も感じていることを承知で言う。  俺は意識の片隅で、マーレイやガーランドの姿を見つめていた。  悪魔も、見ているはずだ。  だが、答えがない。伝わらなかったか、または悩んでいるのかと訝ったが、すぐに口にあたる部分に三日月めいた白い切れ目が現れ、両端を上に切り込ませてにんまりと笑った。 ――よかろう。  今度は悪魔からの要求がこちらに流れ込んできた。情報と、方法が。  フッ、と、瞬時にそれが完了する。 「取引、成立」  そう言うか言わぬかのうちに、俺(たちの)身体はぐにゃりと渦巻き状にねじ曲げられ、黒い環境の一点に突然開いた小さな白い穴の中に、ずるり、と吸い込まれて行った。  ウィルビーが最初に俺とディーを異空間に引っ張り込んだとき、あれと同様のイニシエーションだ。軽いめまいはするが、痛みはない。  あのときと違うのは、今回はエコーのように波動するマーレイの声に包まれたことだ。 〝ルージー! ……戻って来い! ルージー!〟――と。  声に導かれて至り、全身が再び形を成したとき、俺は直径三メートルほどの魔法陣の中にシュウシュウと煙をまとって立っていた。  緊張と防御の姿勢をもって出迎えた召喚者たちをゆるりと睥睨し、声をかける。 「よお、いいタイミングだったな」  よく見ると、ここはマーレイ家のダイニングルームだ。陣を描くため、無造作に壁際に押しやられた大テーブルや椅子が積み上げられていた。  当然だが、ガーランドは警戒を解かない。今にも俺を滅する呪文を唱えそうにしている。陣を等間隔でぐるりと囲んでいるのは、マーレイの屋敷に集ったメンツ。混じっていたマーレイは俺をじっと見るなり、陣の中にずかずかと入ってきた。 「お、おい! やめんか!」  ガーランドの叫びも魔術師たちの怯えもお構いなしに、泣きそうなマーレイは迷いなく真っ直ぐ俺に進み、がしっ!と抱きしめた。 「よかった、お前のままだ。……ルージーのままだ」 「マーレイ君! そう見えるだけだ、こいつの中にはあの悪魔がいるんだぞ。この陣で召喚されたのが、その証拠だ!」 「ああ、いるよ」  俺は素直に認める。 「わかってる!」  マーレイは抱擁を解かない。むしろ、よりきくつ抱き締め、 「わかってる……わかってるけど、わかるんだ! ルージーはルージーだって、わかるんだ!」  五歳児のような言い分だが、マーレイらしい。俺はマーレイの背をあやすようにポンポンと軽く叩いて言った。 「これからしたいことがあるんだが、俺を信じて任せてくれるか」 「もちろんだ」 「少しは迷えよ」 「迷わないよ。お前のやることがいつも正しいとは思わないけど。むしろ、やめたらいいのにと思うことばっかりだけど」 「おい」 「でも、知ってるんだ」  マーレイは身体を引き離して、まっすぐに俺を見た。 「僕に対してすることで、お前が間違ったことをしたことは、ない」 「……ありがとう」  魔術師たちが、じり、と動き出す。  俺は片手のひと振りで、マーレイとガーランドを除く十二人すべてを文字通り凍りつかせた。透明でギザギザな氷のような物質で瞬時に身体を囲い、一人一人を閉じ込めたのだ。  彼らは、考え、見ることはできるが、身動きは全くできない。音も遮断させてもらった。 「おおお……!」 (魔力って、すげえ!)  二人で目を輝かせる。  そのとき、ガーランドが身構え、何かを詠唱しようとした。  再び片手のひと振りで動きを封じる。詠唱を防ぐために声も奪った。  怒りながら口をぱくぱくさせているガーランドと、同時にマーレイにも、俺は念を送った。話すより速い、あれだ。  詳細は伏せ、ただ、〝これからやろうとしていることがあるが、俺を信じろ〟という趣旨だけを。  納得しかねるガーランドはさらに激しくぱくぱくして、両手を振り回した。凍っている奴らには、俺に向かって熱烈に正義を説いているか、呪詛して闘っているように見えるだろう。  準備はいいか、悪魔。  俺は心の中に問いかけた。悪魔は肯定の代わりに行動を指示して寄越し、俺はそれに従った。  ひざまずいて足元の魔法陣に両手で触れる。  俺は何も詠唱しないが、手から伝わる悪魔の力が魔法陣に作用する。  寄木細工が勝手に組み直されていくような様子で、陣の上の文字や記号の形・配置が、次々に描き変わっていった。それが全体に及び、動きが止まると、やがて、今まで誰も見たことのない(と、後にガーランドが語った)陣が完成した。 次に右手を壁に向けてかざす。  と、そこに新たな魔法陣が描き出された。  壁の陣は、完成すると同時にゆらぎ、大きく渦巻状にねじれたかと思うと、中心から人影が……。 「ウィルビー!?」  マーレイが声をあげ、ガーランドが目を見開く。  一番驚いているのはウィルビーかもしれない。  自分が突然に異空間からここへ引きずり出された事実と、目の前に展開している事態をなんとか把握しようと険しい顔をしていてる。  だがその表情は、俺の口を借りた悪魔の声が語りかけたとたん、氷解した。 〝……イエシュア、……待っていろ〟  懐かしい恋人の声を聞く者の顔をする。 「アシュモデ?」  時間がもったいない。  ロマンチックになるかもしれないこの場面を軽くすっとばし、俺はおもむろに左手でマーレイの腕をつかむと、右手の爪をナイフのように鋭く変化させ、手のひらにざっくり切りつけた。 「痛ッ!」  流れ出る血。  マーレイの手のひらを足元の魔法陣に押し付ける。 「……!?」  ウィルビー、ガーランド、マーレイ、そして氷漬けの魔術師たち、全員が何事かと目を見張る前で、魔法陣がマーレイの血を吸い膨れ上がった。  文字が、記号が、線が、それぞれに雷のような白い閃光を吹出し始めた。旋風が起きる。  まるで、光の噴火。  恐ろしいほど眩しいが、熱くはない。  しかし、光に飲み込まれた俺の姿は、真っ白い業火に焼かれているかのようだったという。絶好の演出になったわけだ。  焼かれてはいない……が、身体に苦痛は起きていた。  全身の毛穴と言っていいのか細胞と言っていいのか、とにかく全身のあちこちから、黒い粒子めいたものが次々とにじみ出始め、黒く細かい水滴となって旋風の中に浮かび上がった。  空中をぐるぐると漂っていく。  これもまた、焼け剥がれた皮膚の黒片が散っているように見えたらしい。  黒い粒子は、最後にまとまった流れとなって俺の口から一気に迸り出た。  ちょうど、ディーの身体にウィルビーが二つめの悪魔の黒い稲妻を送り込んだときと逆のように。  なんという苦痛。  身体の一部を無理やり引き剥がされる……、まさにその感じだ。  白い光と黒い稲妻がマーブル状に混ざり合い、圧倒的な光の圧力が膨張し、――ついに、爆ぜた。  光の爆風が広いダイニングいっぱいに満ちる。   と次の瞬間、今度はすべてが一点に向かって急速に集まり始めた。  シュウウウウウウ……ッ!   音を立てて、すべてが吸い込まれていく。  最後にキラリ、と緑の光。  そして、――静寂。  人々が目にしたものは、床に描いたはずの魔法陣がすっかり消えたダイニングルーム。その床に、うつ伏せて横たわる俺とマーレイ。 囚われの氷が解けて自由になった互いの姿。  すべてが吸い込まれたように見えた場所には、こぶし大の透明な緑色の石が転がっている……。 「大丈夫か!」  ガーランドが俺を抱き起したのを見て、魔術師たちがざわめいた。触れるということは……。  俺はかすれた声をしぼり出す。 「……わかるだろ?」 ガーランドがうなずいた。 「おお、わかる。……もう、いないんだな」 「ああ」  再び低く、魔術師たちがざわめいた。  数人がマーレイに駆け寄って抱き起こし、うち一人がガーランドに訊いた。 「ウィルビーの姿が見えません。逃げたのでしょうか」  ジジイが答える前に俺が言う。 「いや、そこの……、緑の石に、悪魔と、ウィルビーを、封印したんだ。……ガーランドが!」 「あ?」  ガーランドが絶句したわずかの間に、魔術師たちから、ドォッ!と歓声があがった。抱き合い、握手し合い、ガーランドに向かって拍手をし、気が触れたように大喜びだ。  その陰で、ガーランドが「お前っ何を言うんだ」という目で俺を睨みつけ、実際にそう怒鳴ったが、歓声に圧されて皆には聞こえない。  はは、計算ずくさ。皆に聞かれないのをいいことに、俺はガーランドに顔を近づけて言った。 「さっき念で言ったろう? マーレイの血を使って封印するから、任せろ、って」 「そんなに細かく言ってないじゃないか! それに、封印って……、俺が、じゃないだろうが!」 「そういうことにしておけよ。いろいろ都合いいんだ。お前が何をしたかも知ってるし」 「む…………」  大騒ぎに、外で警備していたエッドとシキが駆け込んできた。  事が終わったと口々に叫ぶ人々に、エッドは単純に合流して喜び、シキは何か事情があるらしいと察し、黙っていようと判断したらしい。  目をさましたマーレイも、俺の姿を見て安堵し、さらに皆から「終わった」と聞かされて安心したようだ。  再び抱きついてきて、すすりあげている。  ガーランドは渋々その場を収めることにし、恭しく緑の石を両手で持ち上げるとその場にあった食事用のナプキンでくるみ、大事なものであると強調するように胸元に抱えた。 「皆んな! よくやった」  歓声。 「何が起きたのかは……報告は、後日するから、今日は帰って休んでくれ。ありがとう」  正式な報告があるまで今日見たことは他言無用と釘を刺し、十二人は解散となった。  馬車を呼んできてくれと頼んでエッドを外にやってから、いろいろ言いたげにしているガーランドに向き合った。 「言いたいことも聞いてやりたいこともいろいろあるが、今日は帰らせてくれ」  急に、どっと疲れが出てきていた。 「大丈夫かい、このままうちに泊まればいいのに」 「いや、……帰りたいんだ」  俺はマーレイの肩をぽん、と叩いて謝辞を示した。  明日の午後、互いの報告のため俺のうちに集まる約束をしてから、ガーランドとマーレイとシキに背を向けた。  いつもは好奇心いっぱいのマーレイも、さすがに今は一刻も早く眠りたいはずだ。といっても、まだアフタヌーンティーの時刻にもなっていないのだから驚く。  長い、闘いだった。  馬車に乗り込んで気づいたが、服が、いつの間にか俺自身のものに戻っていた。  悪魔を入れたり出したりして弱っていたせいか、馬車の揺れ跳ねに酔いそうになる。なんとか耐えて、たどり着いたドアの前で、しばし深呼吸してから声をかけた。 「開けてくれ、フロゥ」  人ならざる力で鍵が開く音がし、ドアを開けると、目の前に窓からさわやかな風が吹き込むディーのフラットが広がった。 ――おかえり、兄さん。 「伝わってたか」 ――もちろん。ものすごい気配に驚いたら、兄さんなんだもの。聞こえたわよ。 〝ディーの家で待っていてくれ〟  「ありがとな。でもお前、すぐに告げ口しに戻ったろ」 ――そりゃそうよ! 戻るなよ、って言われたら、戻るでしょう! でもね、戻ったらガーランドがね、……あ、いいわ、明日にする。 「ありがたい」  疲れた俺を気遣うフロゥに弱々しく笑ってから、寝室に向かった。  ゆったり寝たいからとわざわざ大きめに特注したベッドに、清潔なシーツに包まれてディーが眠っている。  穏やかな顔。  俺は上着とチョッキとタイと靴を床に無造作に脱ぎ捨てると、ディーの横にすべり込んだ。 「眠ィ……」  ぴったりと身体を寄せて、体温と、鼓動を確かめる。  奴が寝巻き代わりに愛用しているシルクのローブ越しに、逞しい体躯の存在と、その中に確かに息づく命を感じられた。  ああ、もうだめだ、眠い。疲れた。 「……ん……」  眠ったまま無意識に、ディーが片手を俺の身体に回した。 「こいつ、誰にでもこんなことしてんだろうな」  可笑しかった。  いつも通りだな。元通り。  俺は念じたのだ。あの白い異空間の中で。口づけたあとに。  ――――〝元どおりの身体になって、家に戻ってろ〟、と。  もぞもぞ、とディーの胸に顔をすり付けたあと、俺は気絶するように眠りに落ちた。  何時間が経っただろう。目覚めたときには、すっかり夜更けになっていた。 「ディー?」  ベッドに姿がないので、俺は身を起こして部屋を見やった。  寝室の隅の机で何やら書き物をしていた男が、呼びかけに、手を止めて振り向いた。三日前と同じ、にやけ顔で、いけ好かない男の顔。  何事もなかったように、目を細めて俺を見る。 「起こしたかい」  覚えてる?と聞くべきか。  巻き込まれたことを。憑かれたことを。俺を抱いたことを。  そして、覚えてるよ、と言われたら、次になんと言うべきか。  迷っているつもりだったのに、言葉が勝手に口から出た。 「よかった……」  戻ってよかった、元通りの身体でよかった、お前が生きていてよかった……。万感こもるその言葉に、ディーはペンを放り捨てて机を離れ、足早にベッドに戻るやいなや俺をかき抱いた。  すっぽりと心ごと包み込むような、豊かな抱擁。  ああ、ディーだ。  ディーの体温だ、ディーの背中のラインだ、ディーの鼓動だ。 「……ありがとう」  ディーの言葉にも、あらゆる想いが込められていた。  長い口づけを繰り返し、ベッドに倒れこむ。  さんざん、重ね合ったはずの身体。  しかしディーは俺を壊れやすい陶器のように繊細に愛撫し、俺は俺で、その愛撫を初めて身体をさらす生娘のように緊張して受けとめた。 「はは、……緊張するな」  ディーが言ったので驚いた。 「え……?」  「だって、初めて、君を抱くんだから」  熱いものが、胸にあふれた。  何者にも操られず、正気のままで、愛しているという心を晒して、想いのままに、求めあって、身体を繋げるのは、「初めて」だ。  ディーは両足の間に顔を埋め、熱を持つ口の中に俺を包み込んでゆっくりとねぶった。それから時間をかけた愛撫と口づけによって全身を丁寧にほぐされ、自分がクリームにでもなったかと思えるほどに、くったりと、とろけた。頭もぼうっとする。  ディーがあの均整のとれた身体を起こし、熱を帯びたまなざしを注ぐ。  俺の両足を、肩の上に担ぎ上げる。  ああ、入ってくる。〝初めての〟ディーが、入ってくる。 「ん、……はぁっ。んん……」 「ちゃんと息をして、ジェイ」 「ん……、む、り」 「無理させたくないよ」  俺の中を開きながらゆっくりと押し入ってくる存在感に、全神経が集中する。  両足がしびれる。  頭がくらくらする。  胸が詰まる。  もう、気持ちも呼吸もいっぱいいっぱいだ。 「はあっ、あ」 「そうそう、ちゃんと呼吸して?」  ゆっくり、ゆっくり、ディーは抜き差しを繰り返す。  まるでお互いの感触を確かめ合おうよと言うように。今まで激情にまかせて見失ったものを、取り戻そうとするかのように。  激しく高まっていかない代わりにずるずると長引かされる快感は、いつ終わるかがわからないだけに、気がおかしくなりそうなくらい……気持ちいい。  目を閉じて全神経で俺を感じながら、ディーが熱い息を吐く。  俺はその頬に手を伸ばす。 「もっと、激しく……しても、……い、いのに」 「憑かれていたときみたいに?」  ちょっとムッとしたのがわかった。  あれは悪魔の所業であって自分ではない、自分よりもあれがいいと君は言うのか?と、思っているのだろう。……かわいい。  俺は快感に枯れた声で、微笑みながら言った。 「あれも、お、……まえ、なんだか、ら。……いいんだ」  ずくん、と中のものが大きくなった。 「んっ!」 「……煽るなよ」  ディーは挿れたまま俺を抱え上げた。  胸を合わせて向かい合い、尻を支え、突き上げる。 「あっ、あん、あ、あ、あ……、あっ」  乳首を乱暴にねぶり、喉元を舐め上げ、頭を鷲づかみにして引き寄せ唇をむさぼる。  自分の体重がかかる分、奥まで届く硬さが、内壁をこれでもかと擦り続けた。  俺は無我夢中でしがみついていた。たぶん、背中にひどく爪を立てたと思う。  やがて二人して同じ高まりを感じ始めたそのタイミングで、ディーが耳元に低く囁いた。 「お前は、オレのものだよ」 互いの熱が一気に、あふれた。

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