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金糸雀(カナリア)7 side楓
「かえで~っ!どうだった!?」
スコアを胸に抱えたまま、教室に戻ると。
加藤くんが駆け寄ってきた。
「予選、通ってた!?」
期待に満ちたキラキラした目で、問いかけられて。
なんだか照れくさくなって、返事の代わりにスコアを差し出す。
「ん?なに、これ」
「…本選の、課題曲と自由曲だって」
「本選って…うおーっ!やっぱ、通過してんじゃんっ!すげーっ!」
加藤くんは、ぴょんっとジャンプして。
そのままの勢いで、俺をハグした。
「うわっ…」
あまりの勢いに、押し倒されそうになって。
足を踏ん張って耐える。
「ちょ、ちょっと加藤くんっ…」
「すげーっ!おまえ、ホントすげーよっ!」
「あ、ありがと…」
「だって、予選通過したのって、この学校じゃおまえだけだぜ?」
「あ…そう、なんだ…」
ぎゅうぎゅう抱き締められながら、思わず教室の後ろのドアへと視線を流し。
いるはずはないんだけど、そこに蓮くんの姿がないのを確認して。
俺は、ほっと息を吐いた。
「おまえ、マジ天才っ!」
「天才じゃないから…ってか、ちょっと苦し…」
力いっぱい締め付けてくる腕を、なんとか外そうともがいてると。
「いいよなぁ。うちが大金持ちだと、コンクールだって通してもらえるんだもんなぁー」
不意に、悪意に満ちた言葉が耳に飛び込んできて。
一瞬、目の前が真っ白になった
「え…」
「おい、平野っ!てめぇ、なに言ってんだよっ!楓が賄賂でもやったって言いたいのか!?んなわけねぇだろっ!」
思考がフリーズしちゃって、反論も出来ない俺の代わりに、加藤くんが俺を抱き締めたまま大きな声で言い返してくれるけど。
「どうだか…あの、過保護な生徒会長様なら、やりかねないだろ?あいつ、九条の格を上げるためならなんでもやりそうだし。だいたい、音楽科で成績トップの俺が落ちて、そいつが通るってありえないだろ」
平野くんは蔑むような眼差しで、俺を睨んだ。
「楓はなっ!最近スゲー上手くなったんだよっ!実力だ、実力っ!」
「は?実力?…βのこいつが、αの俺に敵うわけないだろ」
「っ…βだってな!やるときゃやるんだよっ!」
「そんなこと、あるわけない。βはαに劣る。世間の常識だろ?しかも、九条に生まれながらαにもなれなかった出来損ないのβのこいつが、賄賂でも使わなきゃ俺に勝てるもんかよ」
「てめぇっ…自分がαだからって、調子乗りやがって!αってのは言って良いことと悪いことの区別もつかない馬鹿ばっかだな!」
「おまえっ!βのくせにっ!」
「やめろよ、2人ともっ!」
加藤くんが平野くんに掴みかかり。
クラスメートが何人か止めに入る。
その光景を。
俺はひとり、スクリーンの向こう側で行われているもののように、現実味もなくぼんやりと見ていた。
違う…
ベータとかアルファとか
そんなの関係ない
これは俺の…
父さんの…力…なのに………
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