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百舌鳥(もず)4 side春海

ずっと ずっとずっと君が好きだった 初めて出会ったときからずっと でも 俺はβで 君もβで 君のすぐ隣にはとんでもなく優秀なαがいて 君の瞳は いつだってすぐ傍にいるあいつのことを真っ直ぐ見てて だから諦めてたんだ 君の瞳が俺を見ることがないのなら 一番近い友人でもいい ただ、その天使の笑顔を見ていられるなら、と でも 今この瞬間 君は俺を見ている あいつ越しじゃなくて その瞳いっぱいに俺だけを映して 俺だけに笑ってくれている それはとても甘美で ひどく満たされた時間で 知ってしまった以上 もうただの友人になんて戻れない 戻りたく、ない 欲しい 君が 君だけが 欲しいんだ 夜風が、隣で歩く君の少し伸びた髪をなびかせて。 美しい音色を奏でる長い指が、それを押さえる。 そんな些細な仕草すら、美しい絵画のようで。 君から一瞬たりとも目が離せない 「ごめんね、送ってもらって」 「謝んないでってば。俺が無理やり送ってくって言ったんだから」 「でもさ…」 「思ったより遅くなっちゃったから、もし途中でなんかあったりしたら…って思ったら気が気じゃないからさ。俺の自己満だから、楓が気にすることないから」 俺の言葉に、楓は苦笑いを浮かべた。 「蓮くんもそれ、よく言うけど…俺みたいなのに、なんかあるわけないじゃん」 不意に出てきた名前に、ひどく嫌な気持ちが湧く。 呼ばないで あいつの顔なんて 思い浮かべないで 「…言わないで」 「え?」 「今は、蓮のことなんて、思い出さないで。俺のことだけ、考えてよ」 「春くん…?」 心の声を思いきってぶちまけると。 君の足が止まって。 俺も、数歩先で立ち止まった。 あと2分も歩けばあいつが待つ家に着く でも、帰したくない 「俺だけを、見て欲しい」 念押しするように、そう言うと。 小さく、息を飲んだ。 俺だけを見つめる眼差しは、ゆらゆらと揺れていて。 でも、逸らされることはなくて。 俺は、大きく息を吸った。 「…好き、なんだ」 星の光を集めた瞳が、大きく見開かれる。 「楓のことが、好きだ。ずっと…出会った、あの瞬間から」 「…はる…くん…」 言ってしまってから、急に緊張が襲ってきて。 ドクドクと、耳元で鼓動が五月蝿いくらいに鳴り出した。 今頃になって全身から汗が噴き出して。 手が、ガクガク震える。 楓は、なにも言わず身動ぎすらせずに、大きく見開いた目で俺をじっと見ている。 「…俺と、付き合って欲しい」 今すぐにでも逃げ出したい気持ちを、なんとかねじ伏せて。 言葉を重ねる。 必死だった。 「…春くん…俺、は…」 「楓が俺のこと、友だちとしてしか見てないのはわかってる。でも…考えて欲しい。俺、今日楓と二人っきりでいて、すごく楽しかった。もっともっと、二人でいたいって思った。楓は?楽しくなかった?」 「楽し、かったけど…」 「だから、もっとこんな楽しい時間を二人で作っていけたらいいなって、そう思ってる。付き合うって、そんな堅苦しく考えないで、そういうことでいいんだ、俺は」 だから、逃げ道を塞いで。 優しい君が簡単には拒否できないようにしてしまった。 狡い男で、ごめんね でも、それくらい君が欲しいんだ 楓は、ずいぶん長い時間、俺の顔を見つめ続けて。 「…少し、時間をくれる?ちゃんと、考えるから…」 戸惑いながらも、そう応えてくれた。

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