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百舌鳥(もず)7 side和哉
「生徒会室、行ってたのか?」
昼休みが終わり教室に戻ると、先生に呼び出されてどこかへと行ってた龍はもう戻ってきていて。
俺の顔を見ると、すぐに近づいてきた。
「ああ、うん」
頷くと。
途端、ニヤニヤと意味ありげな笑いを浮かべる。
「…なに?」
「よかったな?」
「なにが?」
問い返すと、耳元に唇を寄せてきて。
「…兄さんと、二人きりだったろ?」
揶揄うような声音で、囁いた。
「えっ…!?」
「さっき、楓が春海と一緒に中庭で昼メシ食ってんの見かけてさ。もしかして…って思ってたんだよな~」
「あ、えっ、そ、そうなのっ?」
まるで心を見透かされてるみたいで。
動揺して、どもってしまう。
そんな俺を見て、龍はますます面白そうに笑った。
「よかったじゃん」
「な、なにがだよっ…」
そうして、俺の肩に腕を回すと、ぐっと引き寄せて。
「隠しても無駄。おまえの気持ち、バレバレだから」
とんでもないことを、耳んなかへ囁いてきた。
「えっ…ええーっ!?」
思わず絶叫してしまって。
クラス中の視線が、一斉にこっちを向く。
俺は慌てて、両手で口を覆い隠した。
「くくくっ…和弥のそんな顔、初めて見たわ~。おまえでも、動揺することあんのな?」
龍は腹を抱えて笑ってる。
「ちょっと、龍っ!それって…」
「九条、成松、席につけ!授業、始めるぞ!」
そこんとこ、ちゃんと龍に確認したかったのに、いつの間にか教室に入ってきてた先生に怒られて。
俺はひどく動揺したまま、席に座った。
その後もずっと、さっきの龍の言葉が気になって仕方なくて。
放課後、サッカー部の部活へ向かおうとするのを取っ捕まえて、近くのファミレスに無理やり連れ込んだ。
「ったく…サボりみたいじゃねぇか…部長に怒られたら、おまえちゃんと言い訳してくれよな」
「わかってるよ…」
ぶつぶつ文句を言いながらも、俺のおごりのでっかいパフェを頬張る。
「おっ、これ旨っ!おまえも食べる?」
「いらない。ってかさ、さっきの話っ!」
差し出されたバニラアイスが大量に乗っかってるスプーンを払いのけ、詰め寄ると。
龍はキョトンとした顔で、そのアイスを口に入れた。
「さっきの話?」
「そうっ!あの…俺の気持ち、わかってるって…」
「ん~?なんだっけ?そんな話した?」
俺の言葉に、しばらく考えるように顎に手を当てて。
ようやく思い出したように、ああ、と声を上げる。
「おまえが、兄さんのことが好きだって話ね」
そうしてさらりと言葉にすると、また揶揄うようにニヤリと笑った。
「そ、それは、さぁっ…!」
「ん?違うの?」
「あっ…いや…その…」
「なんだよ。好きなんだろ?隠さなくてもいいっての。別に、そんなんでおまえを見る目が変わったりしねぇからさ。正直に認めれば?」
一点の曇りもない、真っ直ぐな眼差しで見つられて。
「う、ん…」
素直に頷くと。
龍は、なんだかお兄ちゃんみたいな顔で、笑った。
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